若い人とおっさんがつながる

「おっさんレンタル」日記

小学生〜80代の方まで、おっさんレンタルを利用する年齢層は幅広いそうですが、この部分を読んで、若い人とおっさんのつながりって、いいなと思いました。

P185
 たとえば、大学を出たにもかかわらず、やりたいことがわからずに悩んでいたフリーターの男性から相談を受けたときのことです。
 こんなことを言っていた彼の姿がとても印象的でした。
「周りのみんなに会うと、『海外に赴任したい』とか『大きなプロジェクトに関わりたい』とか、すごく大きな夢を語るんです。彼らと自分を比べると、途方もない差を感じてどうしてもつらくなっちゃって……」
 僕らの世代と違い、今の若い人はきっと「なにをやっても自由なんだから、夢を叶えなさい」と言われ続ける時代を生きてきました。
 僕が若いころは「もっと現実的な生き方をしろ」「ちゃんと結婚しなくては駄目だ」「定職につかないなんてありえない」など、「○○しなさい」ということばかり言われてきたように思います。
 そんなことを考えると、「就職せずにいきなり起業してもいい」「独り身でも大丈夫」「海外でもどこへでも自由に行けるんだ」というのは、とてもうらやましく思うときがあります。
 けれども、なんでも自由と言われてしまったら、全部を自分で決めなくてはいけないのですから、逆につらいものなのでしょう。
 中には、「自分のやりたいことなんてわからない」と思いながらも、なにかを探さなくてはならずに困ってしまう人がいます。・・・
 こうしたことを続けていたら、若い人たちが「自由に生きるって、何なのさ?」と悩んでいるんだとわかってきました。
 もちろん「活を入れてほしい」「叱ってほしい」という人には思いっきり厳しい忠告をしますが、それでも僕が依頼人に強く説教することなんてほとんどありません。
 もしも言う場合は、必ずはじめに「あくまで47歳のおっさんの意見だから」と伝えます。
 その後に、こう続けるようにしています。
「楽しく毎日を過ごさないと夢なんて見つからないと思うんだ。僕も20代のときは夢なんか見えなかったし、今ようやく少しだけ見えてきてるんよ!」
 僕自身が、ずっとファッションの仕事を天職と考えていましたが、これまでを振り返ると、どんどん心が荒んでいっていたのがわかります。
 でも、「おっさんレンタル」を通じて、いろんな人と出会い、そして言葉を交わしていくことで、ようやく僕なりの「人生でやりたいこと」が、ひとつ見つかりました。
 それは、若い人の背中を押してきたことで、僕の背中を彼らが押してくれていたような感覚です。
 もし、若い人との関係で悩んでいる同世代の人がいたら、僕が言えるたった一つのことがあります。
 それは、「おっさんの僕だって悩んでいるんだ!」と言ってしまうこと。
 年を取ることで、徐々に弱音を吐くことができなくなっていた僕にとって、彼らとともに自分の若いころに考えていた、そして今もある悩みを話してきました。
 すると、相手も僕も「悩み」を間に挟んで、つながることができた気がするのです。