争わない

食べない、死なない、争わない (人生はすべて思いどおり??伝説の元裁判官の生きる知恵)

この姿勢も素晴らしいなと、覚えておきたいと思いました。

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「争わない」を貫くには、どんなに自分が正しいと思うことでも、誰かと衝突しそうになったら、一定のところでサッと引くことも大切です。正しさをひととおり主張はするが、それ以上、相手を説き伏せようとしないという姿勢です。
 長く裁判官をやってきた私ですが、2014年に弁護士登録をしました。沖縄県名護市辺野古で計画されている、新たな米軍基地の建設計画に関する訴訟の代理人になるためです。基地は「敵国」の人々を殺すために存在します。人は、殺すことも殺されることも許されていないのです。
 また、きれいなサンゴやジュゴンのいる海で、コンクリートの航空基地を造れば、それらは死んでしまいます。「戦争をしない世界を実現し、この海をきれいなままに残したい」という思いで、弁護団の1人に名を連ねたのです。
 しかし、彼らがそれでもやるというのなら、「いずれ必ず気がつくときが来る」と考えて、それを待ちます。
 それは、地球や宇宙に対する絶対的な信頼のゆえでもあります。300年もたてば、コンクリートが波ではがれ、その上にまたきれいなサンゴが卵を産み、必ず元に戻っているでしょう。「地球の力なら、彼らがいくら何をしても必ず元に戻るから」と思っているのです。
 私はこの考え方を、ネイティブアメリカンから学びました。アメリカに行って、先住民族の権利のために活動しているデニス・バンクスさんたちと親しくなり、ミネソタにある彼らの家で暮らしたとき、そういう話をしました。
「あなたたちは居留地に追いやられて、ひどい目に遭いましたね。北米では白人が移住してきてから、原生林の95%が切られ、5%しか残ってないそうですね」と私がいうと、「ああ、大丈夫ですよ、そんなこと。必ず元に戻りますから」といって彼らは笑っていました。
 私は、短期間のことだけ考えて、くよくよすることはないのだなと、そのときわかりました。「地球の方が強いよ」と彼らはいいました。