内館牧子さん

ハートが砕けた! (講談社文庫)

内館牧子さんのエッセイを読みました。
なんというか、元気な方だなー、笑ったり怒ったりが自然でいいな、と思いました。
印象に残ったところです。

P40
 このところ、私はかなり落ちこんでいた。どうせ色んな解決策を考えても、どっちみち落ちこむんだからと思い、何もしなかった。ところがこれも結構つらい。ついそのことばかりを真っ正面から考えてしまう。
 そんな時、友達が電話をくれた。映画の鈴木清順監督にサインをお願いしたら、書いてくださった言葉がとてもすてきだったという。
「喜びも悲しみも神々の遊びである」
 友達は私が落ちこんでいることなど全然知らずにサインの話をしてくれたのである。
 が、私はこの言葉を耳にするや、何だか胸のつかえが取れた気がした。単純なほど楽になって、私は心の中でつぶやいていた。
「そっかァ。いいことも悪いことも全部神さまが遊んでるってわけかァ。そう思うと何でもそれほど深刻なことじゃないわよねえ。ジタバタとあがくより、涼しい顔して神さまの遊びを楽しんじゃえばいいんだわねえ。そうよ、そうよ、落ちこみでも何でも面白がっちゃえば救われるってことよ」
 鈴木監督の意図とはかけ離れているかもしれないが、私はそう思っていた。
 つらいことや悲しいことまでも面白がるのは確かに難しい。だけど、「神さまの遊び」だと思うと、腹が据わってくるのも確かである。