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小出 いまお話しいただいたような世界は、もはや、通常の時間の観念が通用するところではないですよね。過去も、現在も、おそらく未来も、なんのジャンプもなく、しかし間違いなく「いまここ」にあるっていうのは・・・・・・。
大峯 それに関しては、やはり池田晶子さんが面白いことを書いていた。たとえば100億年前の宇宙の様子をハッブル望遠鏡がとらえた映像を、我々は、いま、写真集で見られるわけでしょう。しかし、それはいったいどういうことなのか。
・・・
100億年前に星を出発した光が、長い時間をかけて、いま、届いていると科学は説明します。そうすると、その光というのは、私が生まれる前に発せられたものだということでしょう。私はおろか、地球や人類が生まれる前に発せられた光を、いま、私が見ているわけでしょう。・・・そうすると私の目というものは実に不思議じゃないか。いまここで、自分がまだ存在していなかった過去を見ているじゃないか。
小出 ほんとうだ・・・・・・。
大峯 100億年前、まだ人類がひとりもいなかったときの星を見ているのは、いまのこの私の目じゃないか。これはなんという不思議なことだろう。そうでしょう?
小出 100億年前も、間違いなくこのいまと。
大峯 うん、いまとつながっているじゃない。