ラジオが本になったものを読みました。面白かったです。
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伊集院 さあ、そんな中、宮藤官九郎が今回薦める映画はなんですか?
宮藤 『マッキー』というインド映画なんですね。
伊集院 インド映画?これ2013年公開ってことは、少しでもヒットしていたら、いくら僕でも記憶にありそうなんですけど、当たったんですかこの映画?
宮藤 多分まったく当たってないです。・・・
伊集院 パッケージに「世界初、ハエがヒーロー。殺されてハエに生まれ変わった男が愛する女性を守る姿を描いた」って書いてあるんですけど(笑)。〝殺されてハエに生まれ変わった男が〟ってことはさ、〝ハエそのもの〟が主人公ってことですよね?
宮藤 そうです(笑)。だからどうするのかなあって思って。だいたい現実的に映画のルールにとらわれると、キャスティングとかするときにですね「冒頭40分ぐらいでハエになっちゃうんですけど」って言わなきゃいけないじゃないですか?
伊集院 しかも主役を張れる男にですよね。
宮藤 そうです、向こうで言ったらスターに、「すみません、40分ぐらいからはハエなんですけど」って言わなきゃいけないって結構大変だなと思って。しかも声は人間とかですらないんですよ。ハエなんですよ(笑)。
伊集院 えー?じゃあ殺されるシーンが終わったら「お疲れ様でした!」って形になるわけですね?
宮藤 そうです。・・・
伊集院 これ見どころ3つもらうんですけど、ポイント1は?
宮藤 そうですね。いろいろあるんですけど、まず一番は悪役のあまりにも悪役芝居の美意識の高さと、主人公のあまりにも〝KY〟のところ。頭40分がめちゃくちゃ面白いんですよ。ハエになるまでの過程も、「別にいいんじゃない、ハエにならなくても?」みたいな(笑)。それぐらい魅力的なやつなんですよ。「え、これハエになっちゃうの?こんなに面白いのに?」っていう。
伊集院 へー。そのハエになるまでのところですでに面白いんだ。
宮藤 そうなんですよ。途中にミュージカルもあるし。
伊集院 続いてポイント2ですけど。
宮藤 ポイント2はハエのしつこさと、リアリティ、そして徹底的な復讐。自分を殺したやつをハエに生まれ変わって復讐しに行くんですね。その方法が最初は耳元で飛ぶとか。ブーンって。それぐらいのことなんですけど、そのうち体を鍛えだすんですよハエが。これがよくできた設定なんですけど、彼女の趣味がミクロアートっていって、ミニチュアみたいなものを作るやつなんですね。だからハエになった彼のために鍛えなきゃって鉄アレイを作ってあげたりとか、ハエ用の。なんかほかに手がないのかなって思うんですけど。
伊集院 そうですよね。ハエの筋力を上げるって相当遠回りですよね。
宮藤 でもめちゃくちゃリアリティあって、重いもの運びながら飛んだり、すっごい鍛えるんですよ。
伊集院 ハエの身体鍛えるって発想ないよね。
宮藤 そうですね。あとは、火薬を集めて爆弾を作ったりとか、小さいからこそできることをやっていくんですよね。
伊集院 3つ目は?
宮藤 3つ目は、そのハエが最終的に踊るんですよ(笑)。
伊集院 もうインド映画は踊らないと許さないみたいな(笑)。
宮藤 そうなんです。やっぱ踊るんだって。そのミュージカルシーンが最高なんですよ。小さいから、いわゆるアーティストが豪華な照明機器を背負って歌ってたりする、あれがスマホなんですよ。スマホの前で踊ってるだけなんですけど。
伊集院 大型ビジョンみたいなもののかわりに、スマホの画面の前でみたいな。よく考えたな、なんかちょっとすでに楽しそう。
宮藤 そう、よくこれ考えたなって。もう素晴らしくてアイデアが。僕の次の映画のスタッフにこのシーンを観せて「こういうことできませんか?」って言ったら、スタッフが黙って観たあとに「ふふ」って鼻で笑って「やりましょう」みたいな。
