「鈍足バンザイ!」が面白かったので、こちらも読んでみました。
サッカーは詳しくないのですが、試合中、そういうことが起きてるんだ・・・と興味深かったです。
P8
僕たちレスターが成し遂げたプレミアリーグ初優勝―。
その快挙は「100年に一度の奇跡」、「サッカー史上最大の番狂わせ」「前代未聞」「前人未到」といったたくさんの言葉で形容された。
その一方で、僕がどういう想いを抱えていたのか。
「未到」―。未だ到達できず、の心境だった。
プレミアリーグはやはり、フォワードにとって世界で最も難しいリーグだった。そのリーグで活躍するため、自分自身をさらに進化させるため、僕はシーズン中に180度と言ってもいいくらい考え方を変えた。
・・・
優勝したにも関わらず僕がなぜ今、「未到」という心情にあるのか。僕の考えはどのように変わったのか、レスターはどのようにして奇跡を起こしたのか―。変化したのは監督やチームに対する見方もそうだった。・・・
P83
アーセナル戦のあと、「岡崎、全然通用しなかったな」という意見を僕は目にした。
どこで目にしたのかというと、インターネットの掲示板だ。実は僕は、自分が受けたインタビュー記事だけでなく、自分について書かれたコラム、さらにはインターネットの掲示板までチェックしている。
<なるほど、そんな意見もあるんだな>
<それは分かっているんだけど、できないんだよな>
<おお、ちゃんと見てくれる人、いるな>
こんなふうにして、僕はインターネットの掲示板を楽しんでいる。
参考になる書き込みを見つけると、素直にありがたいと思うし、褒められていたら、やっぱりうれしい。逆に、的外れの意見を目にしたところで気にしないし、自分が批判されていても平気だ。悪口が書かれていて、笑ってしまったこともある。
アーセナル戦に関しては、敵将の(アーセン)ヴェンゲルが「岡崎がプレッシャーをかけてきて、やりづらかった」とコメントしていたというのを聞いたし、前半のプレーには自分自身が手ごたえを感じていた。それに、前への迫力が消えた後半を見て「やっぱり、俺のハードワークはチームのプラスになっている」という想いも強めた。
<ここに何かひとつプラスできれば、この価値はすごく上がるんじゃないか>
何かひとつとは、もちろんゴールだ。
他でもない自分自身がアーセナル戦のプレーに感触を摑んでいたから、インターネットの掲示板でどう書かれようが、僕は気にならなかった。
こうやって掲示板を見る選手は稀だと思う。日本代表の面々とそんな話になったことがあるけれど、見ているという選手は僕しかいなかった。本当にむちゃくちゃに書かれていることもあれば、あることないこと好き勝手に書かれることもあるから、相当メンタルが強くなければ見られないだろう。じゃあ、僕のメンタルが強いから見ることができるのか、と言ったらそうではない。
僕は、このアーセナル戦もそうだし、他の試合であっても、自分自身の良かったところ、悪かったところを理解している。自分の頭の中では、そのプレーに対する自分なりの答えがあるから、批判されるであろうことも、すでに分かっているのだ。
だからネットの書き込みは、自分が世の中の人たちからどう思われているのか、再確認できる楽しみがあるし、いろいろな意見を聞くことで、地に足をつけて前を向くことにも役立つ。
実際のプレーがどういう意図で、なぜそういう結果になったのかという現実を知っているのは自分だけだ。でも、だからと言って、それを自分の中だけで完結してしまえば、成長につながらない。ネットで書かれている、他人の声を聞くことで、改めてしっかりと自分の足もとを見つめ直すきっかけになり、次の試合に前向きに臨むことができるのだ。
そういう意味では自分の頭で理解していることを全面的に信じることができない。ネガティブでメンタルの弱い僕だからこそできることなのかもしれない。
アーセナル戦でシーズン初の黒星を喫した翌第8節のノリッジ戦で、ラニエリはここぞとばかりにメンバーを大きく入れ替えた。
右サイドバックにはデラートに代わってダニー・シンプソンが、左サイドバックには、それまで務めていたジェフリー・シュラップを左サイドハーフに回し、フックスが起用された。以降、シーズン終了までサイドバックのレギュラーはこのふたりに固定される。
実際、シンプソンはトレーニングで好調を維持していた。試合に出られない時期、彼は「(出られないから)違うチームに行くために頑張っているんだ」と言って、練習に貪欲に取り組んでいた。どんな理由にせよ、モチベーションを落とさず、真剣にトレーニングに励む姿を、ラニエリはしっかりと見ていた。
フックスも同様だ。ここまでまったく試合に出られず、寂しそうな表情を浮かべることがあったけれど、ムードメーカーとしてチームを盛り上げていたし、トレーニングで手を抜くことはなかったから、ラニエリはチャンスを与えたのだと思う。
<監督、すごいな>
チームが負けていなかったからメンバーを入れ替えるタイミングがなかったのかもしれない。シーズン初の敗戦を喫した直後に、練習で好調を維持していた選手たちをすかさず抜擢するラニエリの采配に、驚いた。
フックスの先発起用は、僕にとっても大きなプラスになった。フックスは僕を見てくれて、得意の左足からクロスを放り込んでくれるからだ。
また、この試合では従来の左サイドハーフではなく、右サイドハーフでプレーしたアルブライトンも、独特のタイミングの切り返しでサイドを攻略し、クロスを入れてくれる。
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これまでは、まずヴァーディの動きに合わせてパスを出していたチームメイトが、僕の特徴を理解してくれるようになったと感じられた。僕自身もパスを引き出すような動きを見せられるようになってきた、ということだろう。
<もう少しだな>・・・
P196
一人ひとり個性の異なる選手たちを適材適所に配置したのは、ラニエリやウォルシュといったコーチングスタッフの功績だ。
また一方で、8部リーグのチームでキャリアをスタートさせ、4年前まで5部リーグでくすぶっていたヴァーディをはじめ、みんながこれまでのキャリアで苦労してきた分、生き残る術を知っている、つまり、自分の生かし方を熟知しているように感じられる。
だから、個性はまるで異なるけれど、レスターは似た者同士の集まりでもあるのだ。
こうしたチームの中で、僕も自分の居場所、生き残り方がはっきりと見えてきた。
ゴールを決める。
そのためにハードワークをしてチームを機能させたうえで、ゴール前に飛び出したり、ゴール前で反転したりして、相手にとって嫌なことをする。
無心でプレーするようになってから、セカンドストライカーだとか、ファーストストライカーだとか、そういうことを考えなくなった。
このチームでヴァーディとツートップを組み、自分の役割をこなしながらゴールを狙おうと無心でプレーしていたら、それが結果としてセカンドストライカーの役割をこなすことになった。自分がパスを受けるために無心で走ったら、それが結果として味方を助けることになった、という感覚だ。
スタイルは「ああだ、こうだ」と考えるものではなく、あとから付いてくるものだということを、僕は学んだ。
