ライムスター宇多丸のお悩み相談室

ライムスター宇多丸のお悩み相談室 (幻冬舎単行本)

 それはこうですよ、みたいな受け方ではなくて、いろんな視点を提供してくれるのがいいな、と思いつつ読みました。

 

P70

宇多丸 友達との距離感なんて、常に変わってゆくものだし、それでも根本的な信頼はおいそれとは揺るがないっていう、そういうもんじゃないの?それに、誰かと疎遠になったぶん、別の親しい人ができたりもしてるわけでしょ。

 だからね、「友達が多くて、みんなから好かれている」というのを理想とするような考え方が、まるで常識のように世の中に浸透しているのが問題だと思うんだよ。昔、インタビューか何かで読んだショーン・ペンの言葉ですごく好きなのがあって。正確な引用じゃないけど、「誰からも嫌われてない人というのが本当にいたとしたら、その人はきっと、何かがものすごく間違ってるんだと思う」っていう。まさにそのとおりで、「みんなから好かれている」なんて、そんなヤツはいないから!いたとしても、絶対ロクなもんじゃない。そこを目指したって、まともな人ほど疲れるだけなんだけど、そこで疲れてしまう自分が悪いのかも……とすら思わせてしまう「友達100人できるかな」幻想が、いい大人のあいだでも非常に根強いわけでしょ。それで必要以上にゲッソリさせられたり、自己評価が低くなっちゃったりしてる人も多いんじゃないかと思うんです。それこそグループLINEなんてさ、「余剰のコミュニケーション」を取るヒマや欲求がある人が使うツールなんで、くうすけママさんのように、そんな余裕のない人がそこをわずらわしいと感じるのは当たり前。本来責められるようなことではまったくないはずなのに……。

こばなみ シンプルに付き合えればいいですよね。といっても、私も悩むことはありますが……。

宇多丸 まぁだから、「人間だもの!」と思って極力引っ張らないようにするのが一番じゃないかなぁ……。実際には僕も、本当につまんない、細か~いことを、いつまでもウジウジ気にして根に持ってしまったりすることが、まったくなくなったわけではないけどさ。そういうときはね、世界の紛争地域のことや、歴史的な大量虐殺について書いてある本を読みますよ!『ジェノサイドの丘』とか、『冬の兵士』とか、『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』とか。別にこれはネタで言ってるわけではなくて。視点のスケールを変えてみる、というのは知性の大事な使い方でしょ?

 とにかく、さっきまでチマチマ悩んでいた件が「心底、どーでもいい」と思えるまで人類の暗部の極限を見つめてみる。フツーに勉強にもなるので、一石二鳥ですよ!

 

P145

こばなみ カーッとなってメールすると、絶対良くない方向に行きません?なので、そういうときは私、一度書いて保存して、少し時間を置いて寝かせて、改めてもう一度チェックしたりします。気持ちが怒りモードのときにその勢いでメールすると、ろくなことにならない……。

宇多丸 間違いないですね。ましてアルコールが入ってたりすると最悪です(笑)。・・・

 で、今回の場合はさ、取引先の人だし、こっちが指図できたりする立場ではないから、そういうクセを指摘して直して差し上げる、ということはできないわけですよね。あくまでこちら側がどういう心構えで受けとめていけばいいのか、という問題。たとえばですけど、メールとかで何かネガティブなな内容を伝えようとするときは、意識的にでもフォロー要素を足し気味にしてったほうがいいんじゃないか、それでようやく実際に会ったときのテンションとトントンくらいなんじゃないかって話をしたけど、ということは、逆もまた真なりでさ、のみの心臓さんの取引先の人みたく、文面と、直接会ったときのギャップが激しいってことがすでにわかってる相手なら、仮にキツい感じのメールを受けとったとしても、こちら側で自動的に、怒気を何割か差っ引いて考えられるようになればいいってことじゃない?

 だから、送られてきた文章のケツに必ず「(笑)」をつけてみるとか。うまく想像できないようだったら、メールをコピペして、ホントに「(笑)」とか、おどけた絵文字とかスタンプとかをいちいち文末に貼りつけてみて、「まぁ、実際に会ってみれば、意外にこのくらいのテンションなんだろうな」と即座に脳内変換できるように訓練する!

「あの進行はありえませんよ(笑)」

 ・・・

「私の立場も非常に厳しくなっている現状ですorz」みたいな。

 ・・・

こばなみ なんだか気持ちがラクになってきました!

「これでは上司に報告できません(^^;)」

「どうして間に合わないのでしょうか? ガー(゚д゚;)ーン‼」

宇多丸 いいじゃん!会えば大丈夫ってことは、この顔文字のテンションだって決して嘘ではない、むしろ真意に近いってことでもあるんだろうからさ。先方の文面の精度を、こっちで勝手に上げてあげてるんだ、くらいに考えとけばいいんじゃない?・・・

 

P192

宇多丸 ・・・しかしまぁ、人生観ってホント、いろいろだなぁ。個人的には、子どもができたって不幸になる人はなるし、そうじゃなくたって幸せな人はいっぱいいるしで、要は人生の選択肢や幸せのあり方って、本当はもっといっぱいあるはずだよね、ってことは言っておきたいですけどね。

 出産や子育てに限らず、「人生、こうでなきゃ」って決めつけると、むしろ不幸になりやすい、その確率が高くなるんじゃないかと僕は思うんです。だって、思いどおりにいかないことのほうが絶対に多いんだから。子どもを産まなきゃ、結婚しなきゃ、金持ちにならなきゃって……。どんなところにも幸せは見つかるし、どんなところにも不幸はあるんだよ。

 それこそ、こんな思いをして産み育てたガキが「まさかこんなザマになろうとは!」みたいなことだって、余裕でありうるわけじゃないですか。でも、それさえも人生の糧なんだ、というような考え方だってあるだろうし。要は、何をもって幸とするか不幸とするかなんて、そうそう単純に線引きできるもんじゃないわけでしょう。なんていうのかなぁ、自分はそうじゃない!って決めつけるだけじゃなくて、もっといろんな生き方や幸せのあり方を、謙虚に参考にするのもいいんじゃない?と思います。

 ・・・

 とにかく、人生にはいろんな選択肢があるんだってことくらいは念頭に置いといてさ。もし仮にもろもろのことが事前の思惑から外れてどうにもならなくなっても、「まぁ、思い描いてたのとは違うけど、こっちもありか?」くらいの感じで、できるだけ柔軟に対応できるよう心がけといたほうが、少なくとも前向きではいられると思うんですよね。仕事だってなんだってさ、最初の夢とは違うけど、こっちも悪くねぇか、っていうもんだったりするわけじゃん。何事もどうせなるようにしかならないんだから、あとはそのなかでいかに腐らずに生きてゆくか、ってことでしょ。・・・