ジェーン・スーさんのエッセイ、面白かったです。
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突然ですが、大事なことなのでよく聞いてください。先達として皆さんにお伝えしたい衝撃の事実があります。四十代になると、どんなにメイクをしても、化粧が写真に写らなくなる珍現象が起こります。マジでマジック。
・・・以前、対談した漫画家の伊藤理佐さんが「化粧をしても写真に写らなくなったので、メイクをやめた」とおっしゃっていたけれど、ようやく私にも、それがわかる日がやってきた。四十五歳くらいから、いままでと同じ化粧をしても、写真の私はすっぴんに見えるようになりました。
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ファンデーションの厚塗り、チークの入れすぎ、ひじきマスカラに象徴される昭和のおばちゃんメイクは「化粧を写真に写そう」という努力が明後日の方向に向かってしまった結果だったのかもしれません。令和を迎えたネオ中年の我々は、同じ轍を踏んではならぬ。
さて、どうしよう。私が目をつけたのはコントゥアリング、いわゆるキム・カーダシアンメイクでした。「いわゆるなんて言われてもわからないわ」という方は、「キム・カーダシアン メイク」で画像検索を。顔面の立体感を強めに演出する手法ですが、我々もついにこれに手を出す時がきたのです。
善は急げと、キムがプロデュースするKKW BEAUTYをネットで注文しました。二週間ほどで届いた商品は、クレヨンのような質感に八丁味噌のような色をしたコントゥアスティックと、目がくらむほどにキラキラと輝くハイライトパレット。え、こんなの顔に塗ってもいいの?と躊躇する質感でした。舞台メイク用化粧品という風情です。CATSになりたいわけではないのだけれど。
まずは言われた通りにやってみようと、使い方に倣って顔面に線を描けば、鏡に映った私は石井竜也かデーモン小暮。本当にこれで大丈夫?
続いてチュートリアルの通りに線をぼかしてみると、肌馴染みは良いものの、休日の石井竜也ぐらいにしか薄まってはいません。休日の石井竜也のことはなにひとつ存じませんが、鏡の中の私はそんな感じに見えました。
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・・・とにかく問題は、化粧が写真に写るか否かだよ。撮影のある取材日、私は満を持してコントゥアリングメイクで挑みました。そして……モニターを見てびっくり。嘘でしょ。めちゃめちゃちょうどいいじゃない!
赤や緑や青といった派手な色を使わないので厚化粧の印象はゼロ。陰影をつけたおかげで顔の凹凸がハッキリしただけでなく、表情まで生き生きとしているように見えます。写真って不思議だわ~なんて思ったところに、通りかかったスタッフが一言。
「今日のメイク、ナチュラルで素敵です!」
ああ、そう。写真だけじゃないのね、現実もなのね。四十代は米米CLUBでちょうどいい。どうやら私の視界も認識も、相当ぼんやりしているようです。
P68
少し年上の女友達と、久しぶりに会いました。遅れて現れた彼女の出で立ちは、真っ赤なパーカの下に黒のタートルネックセーター、首元にパールのネックレス。ボトムスは白パンツに白スニーカー。
そんじょそこらの中年女では着こなせない、カジュアル系素敵スタイリング。ひとつひとつが安物だと成立しないやつよね。だいたい、体形が崩れていたらまず無理。
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しばらく会わないうちに結婚したと風の噂で聞いたけれど、なぜいまさら?・・・
曰く、五歳年下の男性にある日突然告白され、八年付き合っていた彼と円満にお別れをしたそうです。マジか。新しい彼からは三度目のデートでプロポーズされ、「それもいいかな」と結婚を決めたそう。マジか!再びですわ。
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人生に起こる予想外のドラマを、存分に楽しんでいる様子が眩しすぎます。楽しそうな方向へ素直に引っ張られるためには、「自分にはなにが起こっても大丈夫」と信じられる胆力が必要。彼女はそれを持っているのだな。
旦那さんは二度目の結婚だそうで、付き合い出した当初は、経済的な不安がないとは言い切れない状態だったらしい。それでもポーンとジャンプできたのは、彼女が仕事で得た自信を持っているからでしょう。自分のことは自分でどうにかするんだよ。もうひとりくらい、どうにかなるんだよ。
旦那さんは海外で働いているそうで、毎晩オンラインで話すのが楽しいんだとか。いやはや、これもご時世。「オンライン婚よ~」と豪快に笑う彼女の顔の、なんと清々しいことよ。「普通は」とか「常識的に」とか、そんな言葉が馬鹿らしく感じられます。・・・
P189
ついこの間までの当たり前は、今日の非常識。突然ルールが変わったのではありません。以前からダメだったことが、はっきりダメと認識されるようになったという話。
さて、少し前のことになりますが、私は乃木坂46の山下美月さんが出演していたマウスコンピューターのCMが大好きでした。
社内PC買い替えの見積もりを見て、あまりの高額度合いに意識を失った社長が運び込まれた救急病院で、対応するのが山下美月さん扮する医師。
「ハイ、処方箋」と、お手頃価格のマウスコンピューターを勧めるわけですが、医師である山下さんの衣装が、えんじ色のスクラブ、ボトムスは当然パンツ、その上に白衣なんですよ。髪の毛も、後ろでひとつに結んでいました。
ようやくここまできたか!と、私の心が感激でブルブル震えました。五年前なら山下さんは性的魅力を前面に押し出したセクシーな女医役だったろうし、十年前なら清楚な看護師役だったでしょう。
アイドルと呼ばれる女性が、旧来型のステレオタイプではない、アップデートされた女性の役柄とスタイリングで出演するCM。大袈裟かもしれないけれど、あと五年は待たなきゃ観られないかと思っていました。
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かと思えば、五十代の男性著名俳優が研究者を演じるCMでは、二十代女性と思しき助手役のタレントさんが、アシスタント然として横に立っている。すべてが一気に変わるわけではないのですよね。この女性が四十代になった時、現実でもCMでも、研究者になっている時代が来ているといいな。
