気楽に読んで、楽しみました。
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「3時のおやつ」の話 伊集院光
「3時のおやつ」といえば「カステーラ」なんてお上品な暮らしを経験したことはない。たいていの場合、おふくろが「母の会」なる謎の集まりで貰ってきた「ピーナッツチョコレート」だったり「カール」だったり。それにしても「母の会」って何だったんだろう?母はよく「母の会」に出かけては「ハッピーターン」やら「歌舞伎揚げ」やらをちり紙につつんで持って帰ってきたが、あれは全国共通のものなのか?
それはさておき、ここまでに出たお菓子類は「おやつの定義」に含まれていいが、我が家の場合「じゃがバター」や「手羽先」なんてものがまかり通っていて、家に帰って机の上を見ると「お母さんは『母の会(また母の会かよ。何をする会なのか不明)』に行ってきます。おやつは戸棚にあります。みんなで仲良く分けてください」てな手紙。戸棚を開けると山盛りの「手羽先」、なんてことが普通だった。それに何の疑いも持たずに育った結果が、兄弟そろってみんなデブ。「子供部屋が相撲部屋」という状況だ。いまだに何から何までがおやつなのかよくわからない。カレーライスだって甘口だったらおやつで良いような気もするし。
おやつといえば、おばあちゃんの家に行くとお菓子をくれたものだ。そのときおばあちゃんは必ずといっていいほど「お母さんには内緒だよ」といっていた気がする。
あれはおそらく「私は以前あなたにお菓子をあげたところ、あなたの母親から『お義母さま、この子のカロリーコントロールは私がすべて考えておりますのでむやみにそれ以外のものを与えないで下さいます⁉」という嫌味をいわれました。その場は立場も弱い年寄りのこと、納得したふりをしていましたが、私的には孫に『良いおばあちゃん』という印象を与えるためにも秘密裏にお菓子を与えるのでございます。あんたにとってもこれは悪い話ではないと思いますから、その辺を理解していただきたい」という意味合いが込められていたんだなと最近気づいた。
それとおばあちゃんがくれるお菓子はなぜかブルボン系だった。僕だけかと思ったら友人の渡辺君も賛成したのでいい切る事にする。おばあちゃんのくれるお菓子は絶対ブルボン。「ホワイトロリータ」とか「ルマンド」とか。
母親のおやつで思い出すのが、「お弁当のサンドイッチを作ったときのあまりの食パンの耳を油で揚げて味塩をかけたもの」。料理好きの母親がよく作ってくれて、たまにカレー粉をまぶしたものやシナモンシュガーをまぶしたものがあった。
今思えば出来合いの菓子を無造作に買い与えるより出来た母親だと思うが、中一の多感な頃、家に来た男友達に対して自信満々にこれを出されたときは、恥ずかしいやら情けないやらでいたたまれなかった。そのとき友達がいった「田中これ美味いって」「お前の母さんこんなの作れるんだ」という言葉も、今なら彼らの素直な感想だったと思えるが、その時は気を遣われているような気がして内弁慶を爆発させた記憶がある。「普通モンブランとか買ってくるだろう⁉貧乏臭いんだよ‼」
思えばあれから20余年。あの「食パンの耳を揚げたやつ」を食べていない。今日のおやつに作ってみよう、あ、でも昼の残りのチャーハンがあるなあ。あ、もしかしてチャーハンはおやつじゃないのかしら?
