藤井聡太の名言

藤井聡太の名言 勝利を必ずつかむ思考法

 藤井聡太さんの言葉を読むだけでも、ちょっと視点が変わる気がしました。

 

P37

 本に関しては「一度本を開いたら最後まで読んでしまうことのほうが多かった。読み終えてみたら、思ったより時間が経っているみたいなことはよくありました」とここでも将棋と同様の圧倒的な集中力を発揮しています。「本を読むことで、普段の生活をしているだけでは見えない世界、景色を見ることができる、そういう体験が面白かった」とも話していますが、同様に小学校4年生の頃から本格的に読み始めたという新聞に関しても、「自分の身の回りだけじゃなく、世の中でどういう変化が起きているのかを知っておきたい」という思いから毎日、新聞に目を通しているといいます。

 今の時代、必要な情報はネットで手に入るからと、本や新聞を読まない人も増えていますが、藤井自身は「ネットだと、知りたい情報は手に入りますけど、ピンポイントになってしまう」からと本や新聞、さらにはあえて紙の辞書を使うこともあります。特に新聞や紙の辞書は関心のあるところを読み、調べている時に、周辺の情報や言葉も目に入ることで視野を広げる一助となっているようです。

 

P87

 対談で実業家の丹羽宇一郎から「なかなかプロになれない人は、努力が足りないのか、努力の方法が間違っているのか、但し努力しているのに結果が出ないのか、どう思いますか?」と聞かれた藤井はこう答えています。

「将棋は強くなるための方法論というのが、まだはっきり確立されていないんです。これをやれば必ず強くなれるという方法は、まだないので」

 ・・・成功には何が必要なのでしょうか?藤井の答えは「自分なりの強くなる方法を見つけられることが大事」というものです。

 藤井の将棋の研究方法は、東京や大阪に比べて研究会などの機会は少ないため、AIを研究をしたり、AIと対戦する、あるいは棋譜を見て気になった局面は盤に駒を並べること、そして詰将棋を解くことです。では、同じようにやれば強くなれるかですが、藤井が詰将棋を得意としているからと詰将棋をやればいいと言われても、師匠の杉本昌隆八段がそうであるように、詰将棋を見てもあまり解こうという気持ちになれない人もいます。

 では、AIを使って正解を見つければいいのかと言うと、「正解の海の中で溺れそうになり、もがいている棋士は多い」と言う人もいるほど、AIを使うことが強さではなく、息苦しさをもたらすこともあるようです。では、どうするか。

 杉本によると、大事なのは「聞く耳を持つこと」です。最初から拒否してしまうと、せっかくの学びの機会を失うことになるだけに、まず聞いてみて、そのうえで自分なりに考え消化することが大切だといいます。但し、この段階で無批判にすべて受け入れると、せっかくの強みを失うこともあるだけに、あくまでも「聞いて、考えて、消化する」ことがポイントになります。藤井が言うように「こうすれば強くなれる」という方程式はなく、「自分に合った方法を見つける」ことが将棋の上達には何より大切なのです。

 

P93

 ・・・羽生自身は年齢を重ねるにつれ、「記憶する努力よりも忘れる努力が必要」と考えるようになります。理由は前例のようなものを頭の片隅に置くぐらいでないと、独創的な思考や創造的な思考に頭を切り替えることができず、結果的に記憶が足を引っ張ることになるからです。

 ・・・覚えることに時間を費やすより、余計なことを忘れる能力を身につけることで、創造的なことに頭を使った方がいいというのが羽生の考え方です。

 

P156

 ・・・藤井聡太がしばしば発揮するのが「AI超え」や、あるいは人間には指せないのではと評される「神の手」です。

 2020年6月に行われた棋聖戦5番勝負の第二局、藤井が指した「58手目の3一銀」は「AI超え」として、「2020ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート語30に選ばれています。・・・

 この時の藤井の相手は渡辺明棋聖です。藤井にとっては最年少でのタイトル獲得が期待された対局でした。藤井が23分考えた後に指した「3一銀」は、渡辺棋聖だけでなく、多くの人を驚かせます。指された瞬間、控室にいた棋士たちも意味不明とばかりに首をひねります。この局面ではAIも4億手を読んでもこの手は候補にすら挙がることはなく、最善と判断することはありませんでした。

 ところが、さらに時間をかけて6億手まで検討を進めると、突然、絶妙の最善手であることがわかったのです。まさに藤井は「6億手を読む棋士」であり、「AI超え」の手を打つことのできる棋士だったのです。・・・

 藤井は過去にも2018年度の竜王戦5組決勝・石田直裕五段戦の最終盤で披露した飛車切りの一手など「AI超え」と評される手を編み出しています。なぜこのようなことが可能なのでしょうか。藤井はこう説明しています。

「一言で説明するのは難しいですけど、人間であれば条件を整理し、条件に沿った手を考えていきます。その中で導き出した手でした。現状、ソフトが大変強いことは言うまでもないことですけど、部分的には人間の方が深く読める局面もあると個人的には考えていたので、それが現れたのかなと思います」

 藤井によると、AIは強いけれども、「絶対的」なものではありません。「AIが示す手は、有力な場合が多いですけど、別にそれが唯一解というわけではありません」と考える藤井にとって、AIはあくまでも自分の可能性を高めていくものなのです。

 

P185

 2018年2月、藤井がC級1組に昇級した時、そこには杉本も在籍していました。杉本によると、C級1組というのは勢いのある若手が多く、「C級に落ちたら、もうB級には戻れない」と言われるほど激戦のクラスです。人数も37人おり、当時はB級二組への昇級枠は二つしかありませんでした。

 そこに最も勢いのある藤井が加わったわけですから、昇級枠は事実上1つというのが当時の見方でした。杉本は記者から「藤井さんと同じクラスになりましたけど、どう思われますか?」という質問を受けます。・・・杉本は「弟子に追いつかれる幸せ」を感じつつ、「弟子が見ている前で恥ずかしい将棋は指したくない」とも考えていました。

 杉本は既に50歳になろうかという年齢でしたが、藤井の活躍を見て、「自分ももっと強くなりたい」という願望が沸き上がり、以来、睡眠時間を削ってまで研究に取り組むようになります。結果、杉本と藤井を含む4人が9勝1敗で並び、順位が上の杉本は昇級を決め、藤井は惜しくも昇級を逃すことになったのです。その後、杉本は八段への昇段も決め、2019年6月、杉本の「昇段・昇級を祝う会」が開かれます。藤井は「自分が成長できたのも師匠のお陰」と感謝の言葉を述べ、こんな言葉も口にします。

「やはり師匠の活躍が自分にとっても刺激になります。ただプレーヤーとしては、自分自身のことが一番大切なので、成績自体はあまり人と比較することに意味はないかなと思っています。師匠の活躍に刺激をもらいつつ、自分自身も上を目指していけるように頑張っていきたいなという気持ちでいます」