美女ステイホーム

美女ステイホーム 美女入門シリーズ

 こんなに食べたり飲んだりできるって丈夫だなー、そんなスケジュールで動けるって元気だなーと、あまりにも違う世界を楽しめました(笑)

 

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 私の友人が言った。ヘルスメーターにはのらないと。

「どうして朝からイヤな気分にならなきゃいけないの⁉」

 あっぱれである。

 私もそれにのっとって、だらだら食べヘルスメーターにのらない日が、もう一ヶ月続いている。毎日好き放題食べて、このあいだは何年かぶりに氷あずきを食べた。

 ちなみに一緒に氷を食べた、元プロテニスプレイヤーの友人は、何十年ぶりかに食べたそうである。それだけ糖質たっぷりのすごい食べ物だったのだ。

 しかし反省の日はくる。

 おとといのこと、人気の焼肉店に男女四人で行った。そしてシャンパン一本と赤と白のワインを四本飲んだ。

「最高級のお肉をお願い」

 と言ったので、サシの入ったすごくいい肉がいっぱい出てきた。かなり脂がのっている。

 それを赤ワインでじゃぶじゃぶ流し込むように食べる。

 みんなの話は面白かったし、盛り上がった楽しい夜である。

 しかし、やはり私はしてはいけないことをしてしまったらしい。かなりお酒が強いと自他共に認める私であるが、明け方、吐き気で目が覚めたのである。

 ものすごく気分が悪い。重度の二日酔いである。トイレでゲーゲーやろうとしても、ふだんそういうことをしたことがない私は、ストッパーが働く。ゲロしちゃいけないと、体が働くのだ。

 よってすごく苦しい。ベッドの上でのたうちまわった。

 週に六日も外食する人っている?しかもなかなか予約がとれないおいしいとこばかり。

 月曜日フレンチ、火曜日イタリアン、水曜日お鮨、木曜日焼肉、金曜日懐石……という信じられない生活をしている。お酒もいっぱい飲むし、これで太らない方がおかしい。

 外食はお金だって遣う。おごられることも多いけれど、その倍以上、人にご馳走している。

 お金遣って体重増やして、ゲーゲーやって、―あぁ、私っていったい何をしてるんだろうか―反省のあまり涙が出そう。

 早朝からベッドの上でのたうちまわり、午前中のジムのパーソナルトレーナーをキャンセルした。その後に会議がひとつあるが、問題は夜のカウンター懐石である。

「体調悪いから行けなくなった」

 と連絡すればいいんだろうけれど、当日のドタキャンは、いちばんしてはいけないことであろう。それにそのカウンター懐石は、東京でいちばんおいしいと有名なのだ。予約は今年いっぱいムリなんだそうだ。

 そんなお店をどうして断ることができるだろうか。

 午後になったら少し具合がよくなり、八重洲で行われた会議に出席。しかしまだ迷っている。

「コース料理を食べる気力、体力があるかなぁ……」

 時間があったので、とりあえずマガジンハウス近くの喫茶店へ行き、担当のシタラちゃんを呼び出した。そこでイラストを描き、いろんなお喋りをした。

「うちの大学生の娘、突然八千円くれって。眉のエステに行くんだって。そんなとこあるんだねぇ」

 そうしたら彼女は、もちろんと大きく頷いた。

「眉っていちばんトレンドが出ますからねぇ」

 ・・・

「ハヤシさん、今はアートメイクがすっごく流行っているんですよ」

 シタラちゃんはスマホを見せてくれた。

「これはコースで十万円くらいです」

「十万円!」

 あまりにも高い。自分で描いてれば済むことではないだろうか。

「だけどこんなにうまく綺麗に描けますか」

 確かに一本一本、毛の流れに沿って描いていてとても自然。

「このサロン、行く、絶対に行く」

 と騒いだら、シタラちゃんは冷静なことを言った。

「だけどこのアートメイク、一週間は濃くってイモトになるそうですがいいですか」

 それはちょっと……。オバさんがイモトの眉になったら、とんでもないジョークだ。まだデブの方がいいよねーと私は笑い、それですっかり元気になり、カウンター懐石の店へと向かったのである。