死なないノウハウ~独り身の「金欠」から「散骨」まで~

死なないノウハウ~独り身の「金欠」から「散骨」まで~ (光文社新書)

 まさにタイトルの通りの情報がつまった本でした。

 この困りごとはどこに聞いたらいいのか?ということから教えてくれるところもあると知って、すばらしい、と思いました。

 

P6

 ・・・ここで自分のことを書くと、私は49歳の独り身、フリーランスの文筆業だ。

 配偶者も子もなく、いるのは猫が一匹。

 東京で一人暮らしを始めて約30年。親ときょうだいがいるのは遠く離れた北海道だ。

 最近、「将来もらえる年金額」みたいな通知が届いたので開封してみたら、月に4万円くらいだったので見なかったことにした。

 厚生労働省の簡易生命表(22年)によると、日本の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳。私の場合、平均寿命までまだ38年もある計算だ。「老後2000万円問題」を持ち出すまでもなく「これから先」を考えるだけで目の前が暗くなる。

 本書は、そんな不安を解消すべく、情報を集めまくった一冊だ。

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 本書を書き終えた今、この先病気になろうが、仕事がなくなろうが、一文無しになろうが、世の中すべてを敵に回そうが、役所で適当にあしらわれて追い返されようが、ビクともしないだけの情報を身につけている。いわば「無敵」の状態だ。

 ということで、ここまで集めた「死なないノウハウ」を、多くの人に伝授したい。

 

P157

 親の介護や施設についての基礎知識が身についたところで、紹介したいサービスがある。

 それは「一般社団法人LMN」。

 私がLMNを知ったのは、『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』・・・という本でのことだった。

「一種の家族代行業」として、親の最期の「後始末」を手がけている数少ない民間の終活団体として同書に登場する。

「高齢になった親の介護施設をどうするのか、終末期になった時に延命はどこまでするのか、葬儀はどんな形で執り行うのか、お骨はどうするのか」

 それだけではない。いわゆる「毒親」と一切関わりたくない、複雑な家庭環境ゆえ、今さら親に頼られても困るなどの要望にも応えるサービスを提供している。

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 そんなLMNのサービスの中でも特に歓迎されているのが、施設からの第一連絡人になってくれること。施設に入ると家族に頻繁に連絡が来ることがあるそうだが、それを一手に引き受けてくれるのだ。

 また、施設に入ったからといって安泰、というわけではない。そこでトラブルを起こしたり、介護度が重くなれば出なければならないこともある。そのような場合、次の行き先も探してくれる。病院付き添いなどのサポートもあり、亡くなった場合、葬儀の手配、代行、納骨までの一切を担ってくれる。故人の家の片付けや遺品整理、不動産売却や相続、墓じまいに至るまでのサポートを提供しているという。

 親との関係が悪くなくても、「親が遠方にいてしょっちゅう帰れない」「仕事が忙しすぎて親の施設からの連絡にいちいち対応できない」なんて人にもありがたいサービスではないか。

 ということで、LMN代表の遠藤英樹さんに話を聞いた。

 LMNとは、Life(生活)、Medical(医療)、Nursing(介護)の組み合わせ。

 公式サイトには「独自の『シニアライフ特化型コンシェルジュサービス』です」との言葉のあとにこう続く。

「医療・介護の場面はもちろん、QOL(生活の質)の維持や誰もが必ず迎える終末期の準備まで、クライアント様のあらゆるニーズに関わる方々との『つなぎ役』となることを目的としております」

 現在50代の遠藤さんがこのサービスを思いついたのは、自らの介護経験からだという。

「私は両親を在宅で看取ったんですが、その時にこの仕事を思いつきました。当時、フリーランスの仕事をしていたので比較的時間はあったんですけど、それでもかなりのプレッシャーで、結構キツかったんです。その時に、これを仕事にすればいいんじゃないかと閃きました。母親は17年前、父親は9年前に亡くなったんですが、誰かに任せることによって楽になることはいっぱいある。父親が亡くなってすぐ、この仕事を立ち上げました」

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 有料サービスを使える層ゆえ、子ども世代も親世代も、「準富裕層」が多いという。なぜなら、LMNの入会金は44万円。これを払える人ということになるからだ。・・・

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 ・・・LMNでは日常的な生活支援に力を入れているという。

「最近だと、在宅でお一人で住んでいて、お子さんはいるけど疎遠という高齢の方がコロナにかかってしまったケースがありました。この件では、依頼を受けてスタッフが食事の用意などのお世話に行きました」

 このような支援は、一回につき4時間程度で1万1000円。

 1万1000円払って1日4時間ほど訪問してもらえば、施設ではなく在宅生活が続けられるという人も確実にいるだろう。そしてそっちの方が、高額な施設に入るより安上がりという場合もある。

 また、病院への付き添いなどのニーズもあれば、一緒にランチに行ってほしいなどの依頼もある。これまでの事例では、一緒に旅行に行ってほしいというものもあった。

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 中には自分が留守中や入院中、メダカや植物の世話をしてほしいという依頼もある。本当になんでも屋さんであり、コンシェルジュだ。

 相続に絡む不動産取引などもしてくれるという。

「8社くらいの不動産屋さんとも契約しているので取引もできます。家の片付けをして、更地にして、売るところまでできます」

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 散骨をはじめてとして、LMNには「亡くなったあとのスマホやパソコンのデータの処分」、また残されたペットへの対応サービスもある。・・・

 

P212

 原さんは行政書士精神保健福祉士社会福祉士ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、NPO大阪精神医療人権センター理事、ジャーナリスト、大阪公立大学立命館大学客員研究員などの多くの資格・肩書きを持つ人にして、現在「相談室ぱどる」(大阪府堺市)の代表をつとめている。

 なぜ、ここで原さんを紹介させて頂くかと言えば、私自身が「相談室ぱどる」のお世話になってきたからである。

 これまで、プライベートな相談事から友人知人に起きたトラブルなどに対応してもらってきた。それだけではない。時に知人や仕事関係者から「こういう困難ケースがあるのだがどこに相談すればいいかわからない」という時などにも紹介させて頂いた。その中には、どう考えても警察沙汰なのに、いくら言っても警察が動いてくれないというケースもあった。

「ぱどる」が扱う問題は多岐にわたる。

 パンフレットに踊るのは「生きていく安心から、相続・死後の備えまで」「社会保障+福祉+法律+医療+お金+住宅」。

 そうして以下のような説明文。

「総合的に相談に乗り、生活の設計と支援をおこないます。公的機関で対応しづらいサービスを有料で提供します。国家資格を持つ専門職が、家族の代わりになります」

 例として挙げられているのは、家計の負担を軽くしたい、一人暮らしや老々世帯で老後・死後が心配、相続の時に家族・親族が争うのを防ぎたい、障害のある子、ひきこもりの子の「親なき後」が心配―などなど。

 そんな原さんは2020年、定年退職を機に「ぱどる」を立ち上げたのだが、前職は読売新聞大阪本社編集委員。そこで長らく担当してきたのが、医療や福祉の問題だ。

 そんな中で見えてきたのが、専門家は自分の専門分野しか知らないということ。

 福祉の人は福祉に詳しくても、法律や税金についてはわからない。一方、弁護士や司法書士は福祉や社会保障制度のことをあまり知らない。行政の人は、自分の窓口のことはわかっても、違う分野のことは知らない。また、困りごとがある時、そもそもどこに行けばいいのかわからないこともある。市役所なのか、保健所なのか、労基署なのか、ハローワークなのか、年金事務所なのか。

 そんな縦割り行政の中、利用できる制度を知らなくて損をしている人、制度の狭間に落ちるようにしてセーフティーネットから漏れてしまう人が生み出される。だからこそ、ナビゲート役が必要ということで始めたのが「ぱどる」。

 そんな「ぱどる」が得意とするのは、社会保障をフル活用するノウハウや暮らしのサポート、相続、遺言、終活サポートなどなど。中には「継続的な生活支援サービス」もあり、「緊急時連絡カードの作成」や「カギの預かり」、また「パソコン・スマホ・通信の設定補助(基本的なもの)」というのもある。今すぐ高齢の親戚なんかに勧めたいし、なんなら私も使いたい。

 相談料は現在、一時間5000円(+税)。また、役所への手続きサポートは2500円から、公共サービス等の移転、契約、解約、清算(電気、ガス、水道、郵便、定期券など)も2500円からなどと分野別に細かく料金設定されている。・・・