印象に残ったところ、つづきです。
こちらは柄本明さん
P14
―では、俳優という仕事のおもしろさって、どういうところにありますか。
おもしろいから続いてると思うのですが。
柄本 まあ……おもしろいというよりも、「つまんなくない」って感じですね。
人間って、つねに何かを難しくして生きてるでしょ。
―難しく……というとハードルを上げる、みたいな意味ですか?
柄本 つまり「ずっと同じ」じゃ満足できない。
あなただって、そうでしょう。
―あ、はい。
柄本 だから、それはつまり人間の持つ……欲望……ですか。
あの、ロバート・デ・ニーロって役者、たいへんな役者だけど、あの人が『レイジング・ブル』って映画で、痩せたり、太ったりしたじゃない。
―髪の毛を抜いたり。
柄本 俳優って、そういう「熱演」って大好きですね。
私も好きですけど。
で、すごいなあと思う反面、「役者って、バカだなあ」とも思うんです。
―そうですか。
柄本 だってさ、太ったり痩せたり毛を抜いたり、そんなことしてまで。
―でも、そうすることで褒められたら嬉しくないですか?
柄本 嬉しいけど、バカにされてると思ったほうがいいかもしれない。
―え、なぜですか。
柄本 人前で泣いたり笑ったり怒ったり叫んだり、おまえ恥ずかしくないのかって。
―俳優ってカッコいい職業だと思ってる人は、たくさんいると思うんですが。
柄本 そうかもしれませんが、私は、他の仕事と同じだと思います。
でも、こういうひねくれたことを言うと、文字にしたとたん、逆にカッコつけた感じになっちゃうんです。
―あ、その可能性はありますね。
柄本 ねぇ?ありますね。それが私は癪に障る。
まあ、それはそれで、そちらの仕事なんでしょうがないだろうけど。
―では、今回は、なるべくカッコよくならない方向で……。
柄本 まあ、どっちでも。お任せしますけども。
こちらは画家の山口晃さん
P276
山口 「思い」がないから、気負わない。
「気負わず」に画面や絵の具に従うから、自然と絵が整う。
巨匠と呼ばれる画家の絵も、子どもと同じく、自然で、邪気や思いがないように思えます。
―巨匠は子どもで、子どもは巨匠……。
山口 雪舟の絵には、邪気や思いなど一切ないです。
あるのは、ただ「境地」だけ。
・・・
それで言えば、子どもにも、ある種の「完全性」があると思うんです。
サッカーのチームなんかの強さをあらわす、レーダーチャートってありますよね。
―ええ、はい、わかります。
攻撃力・守備力・スピード・気合……とか、いろんな項目を、5段階評価かなんかして、つなげてるやつ。
山口 あれって、できあがったチャートの形が「円」に近ければ近いほど、バランスが取れているんだってことですけど、わたしのように「技術」パラメータは、まあまあ3目盛りくらいとしても、「時間厳守」パラメータが1目盛りとかだと、チャートは、デコボコの、いびつです。
・・・
でも、その子は、それで、その子の真円を保っていると思うんです。
―ああ……いびつの状態が、その子の真円。
ある基準で評価されたらデコボコですけど、本人にしてみれば、それが自分ですものね。
山口 でも、その場合、社会やら大人やら何やらから、「ふむふむ、キミは、時間厳守の目盛りがぜんぜん足りないね」と言われて矯正した場合、そこだけ変にとんがっちゃうと思うんです。
だって、その子は、すでに真円だったんだから。
―ああー……、なるほど。
山口 つまり、別の「いびつ」になっちゃいます。
社会やら大人やら何やらから見て、いびつに見えたチャートを真円に直したら、その子にとってみれば、そっちこそ、「不自然ないびつ」になってしまうんです。
―自然ないびつ……だったものが。
山口 これぞ「社会性を身につける」ってことで、みーんな、それぞれに、不自然ないびつになって大きくなっていく。
・・・
ともあれ、社会性を身につけていく過程で、自分をいびつにしてしまったその人が、たとえば、やがて絵を志し、自己の不自然なゆがみに気付いて、本来の真円性を快復していく、その過程のどこかに、絵は、諸芸術は、あるのではないかと、そんなふうに……ただの慰みごとですが。
欧州最古のインディーズレーベル「サラヴァ」の主宰者、ピエール・バルーさん
(ページ数忘れました)
―かつてピエールさんがおっしゃっていた「自分の得た喜びだけを灯りにして進んでいけば道に迷うことはない。君の人生の唯一の道しるべだから」という言葉は、サラヴァというレーベルのスピリットを、よく表しているなあと思うんです。
そして、すべての「ものをつくる人」に、勇気を与える言葉だとも思います。
・・・
ピエール 人がどう思おうが、気にする必要はない。
ただひとつ……あなたのやりたいことを、すべて出し切ってほしいと思います。
こちらは窪塚洋介さん
P383
―ネイティブ・アメリカンに伝わる子育ての教えを、どこかでおっしゃってましたよね。
窪塚 乳児はしっかり肌を離すな。
幼児は肌を離せ手を離すな。
少年は手を離せ目を離すな。
青年は目を離せ心を離すな。
―それを読んだとき、窪塚さんって、言葉に対して、すごく敏感なんだなと思いました。
それって、いつごろからですか。
窪塚 子どものころですかね。
―本が好きだったとか?
窪塚 まあ、本もそれなりに好きだったけど、ちいさいころから、なにしろ、いろんな言葉を知りたかったんです。
それで「集める」ことをしてたんです。
―集めてた、言葉を。
窪塚 で、いつしか、言葉はちからなんだってことを知って。
―ちから。
窪塚 勇気って言葉を知ってる人は、知らない人よりも勇気を出せると思う。
調和って言葉を知ってる人は、知らない人より、まわりの人と調和できると思うんです。
―なるほど……。
窪塚 そういうことって、あると思うんです。
よく言われることですけど、花の種類によって「最後の表現」って、ちがいますよね。
―桜は「散る」で……。
窪塚 椿は「落ちる」で、梅は「こぼれる」、菊は「舞う」、牡丹は「崩れる」。
そうやって、わざわざ言葉を使い分ける日本語って、美しいなあと思ったり。
・・・
・・・
―「40」という年齢は、意識しますか?
窪塚 んー、年齢はただの数字なんだって、よく言うじゃないですか。
英語でも「just a number」とかって。
―ええ。
窪塚 でも、そういう言葉はあるんだけど、その場合、本当にそう思ってるかどうか……が、重要なんじゃないですかね。
だって「歳とった」と言ってる人は、実際、歳とってますもん。
―なるほど。
窪塚 歳をとるのが悪いわけじゃないけど、年齢がどうあれ、老けない人って老けないですよ。
いつまでも、くそーってくらいかっこいいですし。
―ええ。
窪塚 たぶん、すごくシンプルなことだと思う。
―ご自分では……。
窪塚 不老不死ぐらいの気持ちです(笑)。
そう思うのは、自由だし、タダだし。
そう思ってたほうが、楽しいし。
・・・
―じゃ「40歳になった」って言っても、とりわけ、気にもせず。
窪塚 なったんだとは思うけど、数字です。
50になるときも、たぶんそう。
このまえ子どもに言われたんだけど、「オレがちっちゃいころから、なんにも変わってないなー」って。
―お父さんが、ですか
窪塚 あの、よちよち歩きしてたのが、いつのまにか、俺と同じくらいの背になるまでには、だいたい、15年くらい経ってるんですけどね。
―ええ。
窪塚 そんくらいの年月じゃ、老け込むこともできないんだなと。
―たしかに、小学生のときの自分と、いまの自分と、いったい何がちがうと言われたら。
窪塚 石ってどこから岩になるんですか、みたいなことじゃないですかね。
「え、これくらいのサイズになったらもう岩って呼んでいいの?まだダメ?」みたいなことだと思うんですよ。
―なるほど。
窪塚 そこに境目は感じてないっす。
・・・
―ガンガンいっていただきたいです。
窪塚 やりますよ。死ぬまで。
―死ぬまで。
窪塚 役者って、やめるとかやめないとか、そういうものでもない気がして。
作品に出ていない時期が一時あったりするかもしれないけど、それはやめたわけじゃなく、選んでないっていうだけですからね。
―ええ。
窪塚 いろんな考えがあると思いますが、俺は、食うためにとか、そういうことはしたくないんです。
わざわざ役者でそれをやるんなら、どっかでバイトでもしてたほうがマシで。
―はい。
窪塚 自分の胸がドキドキすること、そのことがいちばん大事だと思ってやってます。
早稲田大学名誉教授の坪井義明さん
P425
―先生は、何かを学ぶとき、重要なことは何だと、思われますか。
坪井 こうして、70歳まで生きてきてさ、びっくりするような答えも出てこないんだけど、やっぱり「素直である」ってことは、何かを学ぶうえで、ものすごく大事なことだと思う。
―素直さ。
坪井 ようするに、「あんた、ここ、間違ってるよ」と指摘されて、素直に聞き入れることがなかったら、もう1回、間違うことになるよね。
・・・
だから、どんな年齢になろうと、どんな地位に就こうと、「あんた、ここ、間違えてるよ」と指摘されたときに、素直に聞き入れられるかどうか。
そのことがすごく大切だと思う。自戒を込めてね。
・・・
あとは、自分の良心に忠実に従う、自らの良心に恥じない行動を取る、そのことを、いつでも、心に留めておくこと。
・・・
「これは、ちがう」と自分の良心が訴えかけているのなら、「これ以上は、自分の良心に背く。だから、自分はもうこの場から去ります」という勇気が、本当に大事。
