Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

 アットホームチャンネルを見て、この本も読んでみようと思いました。

 

P50

「いますけど、いません」

 あの日の取材で、モカさんは笑いながらこう言っていた。

 それは「友達はいないんですか?」という僕の質問に対する答えだった。

 さらにモカさんは、連絡を取り合う子はいてもその子たちのことを「友達だと思ってない」と言い切った。僕は取材を通して、彼女に対して明るくて人当たりの良い女の子、という印象を持っていた。僕との会話も滑らかで、人とのコミュニケーションが苦手なようにも見えない。そんなモカさんが「友達はいない」「友達だと思ってない」と話す理由が僕は気になった。

 そんな僕の頭の中を見透かすように、モカさんは説明し始める。今までに付き合いのあった友達の中に「親友」と呼べるほど仲の良かった子が3人いたという。

「その3人とも全員死んじゃってて。病気とか自殺とかで。それがあったから、友達を作りたくないなと思った」

 モカさんは、そうした経験を「裏切られた」と表現した。彼女にとって、親友がこの世を去ってしまったのは裏切りにも等しい行為だったのだ。そして現在の交友関係のことを「友達じゃないけど、仲の良い仲間……?仲間かな」と話した。僕は確認の意味も込めて「トー横キッズの子らと、一緒に寝泊まりとかするじゃないですか。そういう人たちは友達ではないんですか?」とまた尋ねる。それでもやはり、モカさんの返答は「友達とは思ってないです。相手は分からないけど、私は思ってない」というものだった。そして「作るのが怖い」とつぶやいた彼女に、僕が「作るのが怖いというより失うのが怖い?」と聞くと、モカさんは「そうですね」と言って何度かうなずいた。

 モカさんと出会ってインタビューを開始したあと、こんなやり取りがあった。

モカさんの悩みってなんですか?」

「うーん……なんだろう。特にすごい辛いとかってなくて。たぶんここにいる子ってみんなそうだけど、基本死にたいって思ってる。死ねたらなんでもいいなって思っちゃうから……悩みは『死ねないこと』かな」

「死にたくないからここにいる感じですか?」

「全然違います。全然違くて、死ねないから何しようってなったらここに来るしかない。いる場所もないし、やることもないし、できることもないから、ここにいる」

 この会話のあと、僕は少しの間だけ言葉を失ってしまった。モカさんの中にある救いようのない心情や「死にたくないからここに集まって希望を見出しているのだろう」という僕の浅はかな想像が「全然違う」と彼女に完全否定されたことがショックだった。

 

P156

 マナミさんの取材後、彼女は他のYouTubeチャンネルにも出演するようになっていた。本編でも触れたが、そこでは彼女を〝おもちゃ〟のように扱っている内容も少なくない。

 自戒を込めて、僕のチャンネルも同じように思われているのかも、と考えることもあるが、視聴者からは「青柳さんは他と違う」などの感想をもらったりもする。その違いはどこからくるのか、自分なりに考え続けている。

 他の動画を目にした時、彼女を〝おもちゃ〟のように扱っていると感じた理由は、「太っている」とか「しゃべり方が変」とか、マナミさんの見た目や言動をおもしろおかしく取り上げるだけだったからだ。彼女自身が望んでやっているのならいいが、おそらくそんなに深く考えず、求められるままに動画に出演している。そこに付け込むように、マナミさんの表面的なところだけが切り取られていくことが僕は悲しかった。

 僕が興味を持っているのは、表面的なものではなく、「この人は何を考えているのか」「なぜその考えに至ったのか」という内容だ。マナミさんがメイクをしない理由はなんなのか。取材相手の言動の奥にある〝理由〟を知りたいと思って僕はカメラを回している。

 ほかの動画と僕のチャンネルとでは、マナミさんの言っていることが違う、という指摘も視聴者から多く寄せられた。当チャンネルだけに限っても、彼女の言い分はコロコロと変わる。そんな彼女のことを「虚言癖」と言い捨てる人もいた。

 だが、相手や状況によって話が変わってしまうことは、大なり小なり誰にでもあるのではないか。昨日と今日で考えが変わることもよくある話なのだ。だから、ただ虚言癖と責めるのではなく「なぜそうしてしまったか」を考えることが大事なのではないか。ネットやSNS全盛の時代だからこそ、僕はこうした一歩引いたクールダウンが必要だと思う。

 彼女は、言うまでもなく一人の人間だ。僕が会っているのは、ホームレスの誰かではなく、マナミさんという一個人だ。僕も、僕の周りにいる人も、完璧な人間ではないように、彼女だって完璧ではない。そんな彼女の思いや体験を僕は知りたい。