こんな世界でギリギリ生きています ヨシタケシンスケさんの部分

こんな世界でギリギリ生きています みらいめがね

 ヨシタケシンスケさんのイラストが今回も絶妙でした(笑)

 イラストなしなので面白さが半減ですが、文章だけでも。

 

P49

1.20✕✕年、詐欺を撲滅するため、詐欺組織に潜入する捜査官を育成する学校が創設された。

 

2.そこでは、世界中のあらゆる詐欺の手口や、人の心につけこむ技術を、みっちりたたきこまれる。

 

3.入校するのも大変で、「入校手続きに必要だから」と、言われるままクレジットカードの情報などをつい入力してしまうと、その時点で失格となる。

 

4.卒業生が「悪の道」に走らないための仕組みがあるらしいのだが、その内容は極秘とされている。

 

5.捜査官の活躍により詐欺被害が減少した、という報告はされているが、

 

6.そもそもそのデータを信用していいのか?という外部団体からの意見もある。

 

7.ただ、有能な人材を輩出しているのは本当で、退官者の多くが企業のトップや政治家として活躍している。

 

P88

1.20✕✕年、他者への配慮に欠ける発言や行動に対して、罰金が科せられる制度が始まった。

 

2.高度に発達したAIがその場で言動を審査し、

 

3.その内容によって、加害者側から被害者側に預金が移動するのである。

 

4.社会的地位の高い人ほど罰金も高くなり、失言ひとつで破産する者もあらわれた。

 

5.罰金の一部を使って、「職種と失言の関連性」や「適切な指導」などの研究も始まっている。

 

6.どうしても失言を減らせない人向けに「問題発言をその場で察知し、相手に聞こえなくするマスク」も発売されたが、

 

7.そんなマスクをしている人が信用されるはずもなく、「昔は良かった」的な発言も、マスクにかき消されるのであった。

 

P101

1.我々ストレスは、真面目なのだ。がんばっている人を見ると、応援したくなるのだ。放っておけないのだ。

 

2.しかし、役に立とうとがんばればがんばるほど、相手は心身に不調をきたしてしまう。

 

3.なぜだろう。我々は真面目な人を助けてあげたいだけなのに。

 

4.一方で我々は、いいかげんな人が嫌いだ。見ていてイライラするから、近くに寄りたくない。

 

5.我々は謙虚で奥ゆかしいから、本人には気付かれないようにコッソリと、しかしシッカリとしたサポートを、いつも心がけている。

 

6.同時に我々は、話のわかる連中だ。「サポートは必要ない」と態度で示してもらえれば、そっとしておいてあげられるくらいの分別はもっている。

 

7.「現代はストレスの時代だ」と言われる。我々は期待されているのだ。結果を、出さなければ。

 

P170

1.ここは神の国。ボクの職場は「人間コールセンター」だ。

 

2.動物、植物、人工物など、「人間以外のあらゆるもの」からの「人間」に対するクレームに対応するのが仕事だ。

 

3.人間も神が創ったものである以上「創造者責任」がある、として、近年設置されたのだ。

 

4.人間に対するクレームは、各方面から年々増加し、我々の神手不足もあって、電話がつながるまで5年待ち、10年待ちも珍しくない状況だ。

 

5.一番多いのは「なぜあんな不完全なものを創ったのか」「誰が得をするのか」という内容だ。「人間に対するリコール」の請求も、一度や二度ではない。

 

6.これはシステム上の問題ではないか。ボクは何度も上司にかけあったが、「創造主には何かしらの意図があるはずだ」としか言われないのだ。

 

7.ちなみに、我々が対応する上で決して言ってはいけないことがある。それは「神は自らに似せて人間を創った」という一文だ。