サッカー・グラニーズ ボールを蹴って人生を切りひらいた南アフリカのおばあちゃんたちの物語

サッカー・グラニーズ

 読みながら、目に涙がにじみました。

 どんな内容か、訳者あとがきにわかりやすくまとめられていました。

 

P335

 自らも50代で競技サッカーを楽しんでいるアメリカの白人女性が、南アフリカで黒人の高齢女性たちがはつらつとボールを蹴る姿を動画で見てひらめき、アメリカで開催されるサッカー大会に招待した。それから現在にいたるまで10年以上にわたってサッカーを通して友情を深めていった顚末を語ったのが本書「サッカー・グラニーズ」である。高齢女性がサッカーをすることで健康を取り戻す、という話だけでも驚きではあるが、それ以上に本書には心を揺さぶられる点がある。それは、差別や偏見を超えて人とつながる道があると教えていることだ。

 本書には南アフリカの北部、リムポポ州で最初に結成されたサッカー・チーム「バケイグラ・バケイグラ」(バケイグラはおばあちゃんの意味)でプレーする高齢女性たちのインタビューもコラムとして紹介されている。バケイグラ・バケイグラの創設者であるレベッカ〝ベカ〟・ンツァンウィジは、高等教育を受けて音楽関係の職業を持った、南アフリカでは恵まれた黒人女性だ。順風満帆だったベカの人生は、中年になって結腸癌と診断されたときに大きく変わる。手術と化学療法でなんとか日常生活が送れるまでになったが、闘病中に病院で見かける高齢の黒人女性たちの姿にベカは胸がふさがれる思いだった。そこからベカは高齢女性たちを助けたいと、社会活動家として活躍を始める。

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 本書に登場する南アフリカの高齢女性たちは、生涯にわたって貧困に苦しみ、病気に悩まされてきた。そんな高齢女性たちの姿を見て、ベカはなんとかしなくてはと立ち上がった。病院で出会った女性たちに声をかけて、なだめすかしたり、おだてたりしながらエクササイズに誘った。ある日、女性たちが運動しているそばでサッカーをしていた少年たちが蹴ったボールが転がってきて、女性のひとりが蹴り返したことがサッカー・グラニーズ誕生のきっかけだ。

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 ・・・女性たちを、サッカーが救った。若く健康な男性がやるものとされているサッカーを、病気持ちの高齢女性たちが楽しんでプレーする姿が南アフリカだけでなくイギリスやアメリカのテレビや新聞で報道され、高齢女性に対する見方が変わった。そして著者たちの招きでアメリカに行って、優勝トロフィーまで持ち帰ったことで、南アフリカにおけるサッカー・グラニーズの評価は大きく変わった。「ばあさんはボールを追いかけたりしないで家で孫の守りをしていろ」「短いパンツをはいて、たるんだ腹をゆらして走ってみっともない」などといわれても、めげずにグラウンドでボールを蹴り続けたサッカー・グラニーズたちの勇気と根性に敬意を払いたい。また「グラニーズたちがハッピーでいるために力をつくす」という、ベカをはじめとする活動家の女性たちの奮闘には頭が下がる思いだ。

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 ・・・本書に登場する人たちは、偏見や差別を乗り越えてつながろうとするエネルギーがとても大きい。それはサッカーという万国共通語となるスポーツを共有することで生み出されるものかもしれないが、ほんの少しの勇気と好奇心があれば、つながる力が生まれると教えてくれる。「サッカーをしようよ」とグラニーたちを誘ったベカはもちろん、著者のジーン・ダフィーのように、勇気を出してつながろうとすることで人生が変わり、世界を変える道が開けるかもしれないのだ。

 

 こちらはエピローグにあった著者の言葉です。

P320

 最初にグラニーたちのビデオを見てから、自分の人生がどれほど劇的に変わったかを振り返ると驚くばかりだ。いま私は、資金集めに情熱を注ぎ、人前に立って話をすることを恐れない。以前の私はただ黙って座っているだけだった。人々の気持ちを動かそうと熱心に話したりすることは、私がもっとも苦手とするところだった。スポットライトを浴びることに臆する気持ちを、私は克服した。グラニーたちが私の心の扉を、以前よりもっと大きな世界へと開いてくれた。私はグラニーたちの物語を、できるだけ遠くまで、できるだけ多くの人たちに届けたい。

 私の南アフリカの友人は楽しい人たちで、自分のパワーを感じ、自分が生きていることに感謝している。背負っている荷が重くなると、「ああ、それでも人生は続くんだよ」と哲学的な言葉をつぶやいて自分を励ます。生命は自分たち自身よりも大きく、自分たちは大きな世界の一部でしかないと知っている。だから人と集まり、互いに支え合い、何か美しいものを創っていくのだ。互いに手を取り合い、もっと大きな夢を実現するための勇気を互いに与え合う。

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 ・・・そしてグラニーたちの人生をそんなふうに花開かせたのが、やさしいママ・ベカの説得だった。

 私は底なしの寛容さを持つベカを自分のロールモデルにするようになった。弱い立場にある人たちが何に困っているかを見定め、問題を分析し、自分が持てる利点、能力と地位を惜しみなく使い、守り、慈しみ、元気づける。