おととい、きのうに続いて、こちらの本も、そんなふうだと気が楽だな~というヒントが色々ありました。
P23
朝起きたとき、あたり前だと思ってることを発見しなきゃいけないと思っているの。
だから毎朝、手足を確認して、手足が動いてるなんてうれしい、わーすごい。新聞を読もうと思ったら、ちゃんと目が見える。やだ、耳も聞こえる。テレビやラジオをつけたら、音も聞こえる。
で、ゆっくり起きる。歩けてうれしい。うわーラッキー。
そういうことを毎朝確認して、うれしくなっちゃうんですよね。
それでまわりを見回すと、新しい日の光、新しい空気。水道をひねれば水が出る。ぜいたく。
そういう普通のこと、あたり前だと思ってることに気づいて、毎日喜ぶ。「やったー、ラッキー」って。
年をとったら、そういうことをあたり前だと思わないで、新鮮に感じる。そんなアンテナを張っているの。
魔法の言葉は「ありがとう、うれしい」だからね。なんでも「ありがたい、うれしい」と思うと、だいたい心配事がほとんど消えていくような気がする。
赤ちゃんのような気持ちで、毎朝まわりを見る。わあ、鳥が鳴いてるとか、虫がかわいいとあ。
だんだん大人になったら、すごく感覚が鈍感になってきて、何に対しても驚かずに、あたり前だと思って過ごしちゃうじゃない?それって、とてももったいないと思うのね。
P110
最後に健康診断を受けたのは、29歳か30歳くらいのときじゃないかしら。
だから、ずっとあとになって、市役所の人が二人で、保険証を使わなすぎるってことで、実家に調べに来たの。
二人ともきちっと背広を着て、「市役所の者です」って。
わたしはエプロン姿で、ハンコを持って玄関に出て、「どういうご用件ですか?」って。
そうしたら、「あの、田村セツコさんはいかがなさってますでしょうか?」って聞かれて、「わたしですけど」っていったら、二人とも「そうなんですか、どうも失礼しました」って。
「ご用件は?どこかハンコ押すんですか」って聞いたら、「いやそうじゃなくて、失礼ですが健康法はなんですか?」って。
それで、「そうですね、健康法ってないんですけど、あまり病院に近づかないようにしてるんです」って答えたら、二人とも笑ってしまって。
すぐ近くに立派な市民病院があるの。だから「そこに近寄らないの」っていったのがおかしかったみたい。
病院にはね、家族がお世話になっていたからよく出入りしてました。
・・・
自分が診てもらうのにはためらいがあるのは、たぶん、臆病なのかも?
P152
わたしの知っている人で、なんだか、うららかになって、話が届かないっていう人が何人かいるの。
あるとき、恩師の松本かつぢ先生が行方不明になられて、横浜のほうで見つかったことがあったんですね。
そうしたら奥様が、「お父様がとうとうぼけちゃったから、セツコさん、上田トシコ先生にそのことを知らせてほしいの」っておっしゃったの。
まさかぼけたとはいえないので、わたしもいろいろ考えて、「あの、ちょっと先生が、うららかになられたみたいで……」ってお伝えしたの。
そうしたら、上田先生がすごく喜んで、
「セッちゃん、うららかっていいね、わたしのときもそういって」っておっしゃったの。
そんなことで、ちょっとうららかになったくらいのお友だちは、何人かいます。
でも、ずっとうららかじゃなくてね、何かのときに思い出話などで刺激すると、ぱっと戻るんですよ。行ったり来たりするのね。
・・・
これは脳が生きてる証拠ですよね。「新しいわたし、こんにちは!」って感じ。
固定されているんじゃなくて、揺れて行ったり来たりする。これっておもしろいですよね。・・・
P158
ピアニストのホロヴィッツの奥さんって、「あーたね、70歳を過ぎたら、約束なんて忘れてしまってよござんす」っていう人なの。
お芝居でそういうセリフがあって、わたしは、すっごく気に入ってます。
約束とか責任とかで、がんじがらめになって生きてますよね、わたしたちって。そういうのはもう自由に忘れていいってことよね。70歳を過ぎたらOKOK。
P198
わたし、「幸せ100個」っていうリストを作っているの。
まず首を上に伸ばす。それから手を水につける。気持ちいいのよ。手には数えきれないくらいツボがあるの。冷たい水につけて、それからあったかいお湯につけると、全身に響くんですよ。漢方薬のように効くわけ。
コーヒーの香りを嗅ぐ。鏡に笑いかける。
お得意の歌をワンフレーズ。今わたしが凝ってるのは、賛美歌の「いーつくしみ深ーきー友なるイエスはー♪」って歌。気持ちよくなるのね。クリスチャンでもなんでもないんだけどね。あとは「Alice In Wonderland♪」。
パチパチとまばたきをする。舌をべろーっと出す。拍手をする。手の刺激が全身に伝わりますからね。お湯を沸かす。お湯を沸かすと、やかんの口から湯気が見えるの。すごく心に安らぎを与えてくれる。ときめくわね。
お茶を淹れる。お昼寝のときにアイマスクをする。まあこれはどうでもいいけど。ハチミツをちょっと舐める。
夕方5時を過ぎたらお酒を一口。柚子の皮をちょっとかじったり、匂いを嗅いだり。郵便局へ行く。郵便局で働いている人を見るのはとても気持ちがいい。切手はお値段が安くって、すごく遠くのほうまで運んでくれる。市役所に行く。市役所の人の地味なお仕事ぶりを見て励みにする。
図書館に行く。本がいっぱいある。本の中から、いろんな人が話しかけてくれる。そして図書館の机と椅子があるところは、おしゃべりしちゃいけないので、寡黙なお友だちがいっぱいいる。
映画館に行く。カフェで人々を眺める。八百屋に行く。新鮮な野菜に呼びかける。雲を眺める。玉ねぎを刻む。リンゴの皮を剥く。リンゴを一口かじる。
歯をみがく。歯をみがくのは馬鹿にならないの。歯ブラシで歯茎を刺激することは脳にいいし、顔の表情、美容にいいんです。
猫をなでる。鉛筆を削る。鏡をみがく。鏡をみがいてツルピカにするとお部屋もきれいになる。お皿を洗う。あぶくを立ててお皿を洗ってお水で流すと、精神的にすごく気持ちがいい。
気になったことは「ごめんなさい」と電話をする。ぐちゃぐちゃ考えてないで、あっさり謝ると、「えー、そんなこと気にしてなかったのにー」といわれて、両方ともニコニコ。同様に、「ありがとう」をケチらないでいう。
マニキュアを塗る。アイロンをかける。アイロンをかけると気持ちのシワも伸びる。
テレビを見る。朝早くから、コメンテーターの人はちゃんと勉強してしゃべっているので、びっくりします。
空を見る。針と糸を使う。たまに使うと気持ちが落ち着く。
メールの時代だけど、わざわざ手紙を書くと、エレガントな気持ちになります。スポーツ中継をテレビで観ると、自分の筋肉も刺激される。
虫眼鏡でいろんなものを覗くと、驚きがいっぱい。庭の苔なんかを見ると、森のように見えてとても新鮮な驚きが。手や足と目が合ったら、「ご苦労様ねえ」とあいさつする。
コンビニを楽しむ。コンビニの中をお散歩して、「あら、こんなもの売ってるんだ。メーカーの人って、いろいろ工夫するのねー」と感心しながら、今まで食べたことのないようなものを買ったりして楽しむ。
工事現場を観察する。わたしはよく工事現場を観察するんだけど、工事をしている人たちは職人技っていうんですかね、もういろんな道具を使っててきぱき働いているんです。レンガとかタイルをぴっちり貼ってるところなんかを見ると、「こんなにカーブしたところによく貼ってるなあ」と思ったり。「サインをしたらアートじゃん」って思うようなことがいっぱいありますね。個展の会場なんかに出せば作品になるようなものを、職人さんたちが、ちゃっちゃとやってますよ。
絵の具屋さんに行っていろんな絵の具を見るのは、ティファニーに行って宝石を眺めるみたいで、とっても素敵。
モーツァルトやショパンのピアノのCDをかけると、とたんにお部屋が輝きますね。
新聞を読む。新聞はわたしにとって家庭教師。自分に常識がないので、朝と夕方に家庭教師が来てくれると解釈しています。
パセリの葉っぱ、セロリの葉っぱ、シソの葉っぱは、ちょこっとかじると、全身がさわやかになります。眉毛を上げて目をぱちぱち。これは、有名なフィギュアスケートの選手がコーチにいわれたことで、全身の疲れがとれます。
鏡にあいさつ。「お元気ですか?うれしい。ありがとう」。
メガネをみがく。ベランダで深呼吸。ポストに「ありがとう、ご苦労様」とあいさつする。とかなんとか、いっぱいあるの。
これは、日々いくらでも増えます。こういうことが、年をとると楽しくなるんですね。これはいくらでも見つかりますから、100でも200でも見つけて、楽しんでいただきたいです。お金もかかりません(笑)。
P.S. わたしの最近のブームは〝ひとりごと〟です。そういえば、昔からおばあさんは、アリスみたいにひとりごとをぶつぶつつぶやきながら暮らしています。
あらま。びっくり。どうしよう。へいきへいき。OKOK。大丈夫。あわてない。おちついて。などなど。話し相手がいなくても、話はいくらでもはずみます。
声に出して「あのね、それからね」と話をしていると、滑舌もよくなるみたい。
今、実験していますけどおすすめです(笑)。