フローについて

超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験

 とても興味深いです。

 

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「フロー」という用語を作り出したのは、シカゴ大学心理学科の元学科長であり、現在はクレモント大学院大学で教えるミハイ・チクセントミハイだ。・・・

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 チクセントミハイがおこなったインタビューで、彼の被験者たちは、最高のパフォーマンスができる状態を表す言葉として、「フロー」という言葉をよく使っていた。すべてがうまくいけば、物事はたやすく、流動的で自動的に進んだ。つまり、流れる感じがするということだ。そこでチクセントミハイは、・・・「フロー状態」という用語を使うことにした。・・・「フロー状態」を、「ある活動に熱中していて、ほかのことが重要だと思えない状態」と定義している。「自我は消え去る。時間は飛ぶように過ぎる。あらゆる動作や行動、考えは、ジャズ演奏のように、その前のものに続いて不可避的に生じる。自分という存在すべてをその活動に注ぎ込み、自分のスキルを最大限に発揮している状態だ」

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 例としてハミルトンが、・・・巨大な波に乗る経験をどう表現していたかを考えてみよう。「そのときになると、始まりも終わりもない。終わったところから始まりになる。そこに入ると、時間もなく、まるきり何の考えも浮かばない。ひたすら純粋なんだ。自分があって、それがある、という感じ。だから私たちはそれを追い求め続けている。いつでもそれを探している。それが必要なんだ。生きていると感じるために。完璧だと感じるために。そしてすべてをはっきり見渡すために―そうするとほかのすべてがきちんと並んで、正しいところに落ち着く。あらゆることが耐えられるものになる」

 

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 この一〇年間で、独創的なひらめきがどうやって生まれるのかについて、多くのことがわかってきている―フローが独創的なひらめきの頻度を高めることもそのひとつだ。・・・

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 創造性は、特徴的な脳波というものも備えている。脳の右半球から発せられるアルファ波だ。これは、突然のひらめきへの準備ができた状態と考えられている―ひらめきそのものではなく、むしろ、その前兆となる状態ということだ。・・・

 ・・・突然のひらめきが起こった瞬間には、別の脳波が見られる。難しい局面を突破するような直観が生まれるきっかり三〇ミリ秒前に、脳波計はガンマ波の急増を示すのだ。この超高速の脳波が見られるのは、広く分散した神経細胞がつながるときだ―つまり、新しい刺激や思いつき、ぼんやりした記憶が、まったく新しいネットワークにまとまるときである。・・・

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「フローの経験があれば誰でも、そこがきわめて創造性に富むところだと知っている」と言うのは、NBCエクストリームスポーツのコメンテーターを務めている、プロスケートボーダーのクリス・ミラーだ。「私たちはその創造性の力を、大規模に活用している。ただ、芸術家のアトリエや、テニスコート上での創造性と、五〇フィート(一五メートル)の波のチューブの中での創造性には違いがある。その大きな力を、ヒューマン・パフォーマンスの絶対的な限界を押し広げるのに使えば、単なる想像力に富んだブレイクスルー以上のことができる―現実を自分の思い通りに変えることになるのだ。そして、そういうことを頻繁にやっていたら、それがどれだけ自信につながるのか考えてみてほしい。ダニー・ウェイやレイアード・ハミルトンにはそれができたんだ」