超人の秘密

超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験

 こんなにすごい人が何人もいたとは・・・序文に書いてあった通り、気づいてなかったです。

 

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 この本は、「ありえないこと」についての本だが、まずは「目に見えないもの」の話をしたい。この三〇年間で、思いもよらない人たちが、人間のパフォーマンスを一五万年にわたる人類の歴史で前例がないというくらい、きわめて短期間で大幅に向上させてきた。・・・彼らは人間の可能性の限界を完全に書き換えている。ところが、これには奇妙な部分がある。・・・その変化に気づいている人はほとんどいない。

 その理由は簡単だ。こういったパフォーマンスの急激な向上のほとんどすべてが、エクストリームスポーツの世界で起こってきたからだ。確かに、サーフィンやスキーはいいレクリエーションになるし、Xゲームズをテレビで見るのは面白い。しかし、高さ一〇〇フィート(三〇メートル)の波でのサーフィンや、高さ一〇〇フィートの崖からのジャンプとなると、私たちの多くには、命知らずの人間がやってのける手品に見える。つまり、理解できない軽業を、正気ではないアスリートがやっているのであって、自分に関係あるとは思えない。

 とはいえ、不可能に思えるようなことも、実際には、時間をかけて徐々にたどりつくものだ。エクストリームスポーツでの偉業のそれぞれのかげでは、歴史やテクノロジー、トレーニングといった面での小さなステップが、うんざりするほど多く積み重ねられている。・・・

 しかしこれも始まりにすぎない。エクストリームスポーツのアスリートによる成果のなかでとりわけ印象的なのは、研究者が「フロー」と呼ぶ状態を彼らが会得していることだ。・・・フロー状態では、目の前の作業への集中が高まり、それ以外のことはどこかに行ってしまう。行為と意識がひとつになる。時間が飛ぶように過ぎる。自己意識が消え去る。そしてパフォーマンスは天井知らずに高まる。

 この経験が「フロー」と呼ばれるのは、その最中には流れのような感覚を経験するからだ。フロー状態にあると、ひとつの行為や決断が、次の行為や決断へと、やすやすと流れるように切れ目なくつながっていく。フローにある人は、ものすごい勢いで問題解決をおこないつつ、極限のパフォーマンスの川に押し流されていくのだ。・・・

 フローは、最適な意識状態であり、最高の気分になりながら、同時に最高のパフォーマンスを実現できるピーク状態だといえる。・・・

 ・・・

 ・・・確かにフローは、世界で最も望ましい精神状態かもしれない。ところが最も実現しにくい状態でもあるのだ。何世紀にもわたる努力が続けられてきたが、フローに繰り返し入る確実な方法はまだ見つかっていない。・・・しかし、エクストリームスポーツのアスリートは例外だ。簡単に言えば、エクストリームスポーツのアスリートが高山やビッグウェーブ、急流などから無事に生還しているのは、ひとえに、スポーツ界でよく言われる「ゾーン」に入っているおかげである。極限のヒューマン・パフォーマンスの限界に挑もうというときには、フロー状態になるか、死ぬかという、厳しい選択になる。

 ・・・科学者によるフローの研究は最近、大きく前進している。・・・デバイスの発達によって、以前は主観的な経験にすぎなかったフローを、本格的に計測できるようになったからだ。・・・これをさらに進めて、このフローという新しい科学を、さまざまなエクストリームスポーツの現場に当てはめていくと、フローが見事に作用する仕組みが詳しく理解できるようになる。・・・

 ・・・この本で主に紹介するのは、普通の人とは異なる「彼ら」だが、この本自体は「私たち」、つまり筆者である私と、読者であるあなたについて書いたものだ。最も必要とされる場面で、最高の力を発揮する方法は誰でも知りたいことのはず。さらに創造性を高め、満足し、何かに夢中になる方法だとか、気分を高めて、落ち込まないようにする方法も知りたいだろう。エクストリームスポーツのアスリートたちが達成してきたことを見ればわかるとおり、フローを身につけられれば、どんなことでも達成でき、そこに限界はない。自分の力で大きな変化を生み出せるのだ。

 


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