こんなことあるんだぁと驚きつつ、確かこの方、泥棒に入った人に脅されながらも、その人の生い立ちを聞き、挙句に抱き合って別れ、後にコンサートに招待したというエピソードもあったような?と思い出しました。こちらです↓
https://rocket.tokyo/program/tt/2018/03/02172034/8109/
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ある日、朝からとても楽しいことが起こりました。
いつものように寝ぼけた顔で、通勤路であるマンハッタンのグランドセントラル駅に向かって歩いていたら、
「Hi friend!!!! Hi friend!!!!」
と叫ぶ声が聞こえてきました(「Hi friend」は、名前は知らないけど、親しい気分の顔見知りを呼ぶときに使います)。
まさか自分を呼んでいるとは思いませんでしたが、あまりに大きな声なので振り向きました。すると、自転車に乗ったおじさんが僕にむかってニコニコして手を大きく振っています。
僕が「?????」「なんや、このおっさん?」と思ってぽかんとしていると、彼は、
「以前は布団をありがとう!ほんとうに助かったんだよおお」
と言いました。そのときに、彼が誰だかを思い出したのです。
ある晩、家の近くでホームレスが強烈な暴風の中、段ボールにくるまって寝ているのを横目に通り過ぎ、家に着きました。寝るときになって、あまりの風のはげしさに、そのホームレスがどうしても気になって眠れませんでした。
「僕には家があるから、羽毛布団はなくてもいいかな。でも、この羽毛布団は日本で買ったいいものだしなあ。送料込みで10万円はしたな……」
悩んだ結果、羽毛ふとんを届けてしまいました。清水の舞台から飛び降りる感じで……。おじさんは、びっくりしていました。喜んで握手を求めてきましたが、とにかく寒いので、僕は急いで家の中に入ったのです。
その人が、なんと僕のことを覚えていて、声をかけてきたのです。
「あのとき俺は、誰を信じることもできず、人生に絶望し、何もする気が起きなかった。でも、人から親切にされて、人生に光が見えてきた。ちゃんと働いて、人生やり直そうと思ったんだ」
それからおじさんは、仕事を見つけ、まじめに働き、楽しい毎日を送っているみたいでした。何度も、何度も、何度も、「Thank you」を繰り返していました。周りの人が見ていて、恥ずかしかったのですが、とてもうれしかったです。
・・・
つい最近、ようやくグリーンカード(永住権)が取れました。
そこで、単なる偶然かもしれないですが、説明がつかない話があります。
イタリアの大聖堂で演奏したとき、聴衆の一人の方から、
「あなたが演奏している間、金髪の青年がずっと横にいた。彼は天使ね。おめでとう」
と言われました。・・・
・・・その後、東京のアメリカンクラブで演奏したとき、
「悟平君の演奏中、ずっと金髪のカールの青年が横にいたよ。見守ってるみたいだった」
と言われ、ハッキリ言って、ちょっと気持ち悪い感じがしました。・・・
そして、今度はカーネギーホールでのニューヨーク復帰コンサートのあと、
「ゴヘイさんのうしろに、青年がずっといたよ」
と言われ、
「金髪カールの男でしょ?」
と言ったら、
「そう!!知ってるの?」
それから、大阪府堺市でコンサートをしたとき、友だちのお母さんから、
「悟平の舞台に、クルクル巻き毛の金髪男が立ってた」
と言われました。
さすがに、いくら偶然でも、全然違う国々で、共通点のない人々からまったく同じことを言われて奇妙に感じながらも、「ま、いるんだ、そういう男が僕の横に」くらいに思っていました。
そんなある日、コズモ先生になにげなくその話をしたら、
「この写真を見て、驚くなよ、ゴヘイ」
と、言われて見せられた写真が、金髪巻き毛の美青年でした。幼き日のブラッドショー先生の写真でした。
しかもブラッドショー先生は、幼少の頃、地元の金髪カールコンテストで優勝していたのです。当時の新聞記事を、コズモ先生が僕に譲ってくれました。
そしてつい最近、グリーンカードを正式に弁護士に見せたときに気づいたことは、僕のグリーンカードの発行日が、10月31日。デイヴィッド・ブラッドショー先生の誕生日でした……。