ご縁に身を委ねる

身体の言い分(毎日文庫)

 池上六郎さんのあとがき、印象に残りました。

 

P323

 今、自分に起こるすべての出来事は、大袈裟に聞こえるかも知れませんが、宇宙開闢以来のダイアクロニック(Diachronic=通時的・歴史的)なことのいくつかがシンクロニック(Synchronic=共時的)に、今そこに在ることに間違いありません。そんな大きな出来事を頭で考えて、その事実を小さな枠の中に閉じ込めるのではなく、祖先から脈々と波打っているご縁に身を委ねると、ちょうどよい時にちょうどよい場所で、思いがけない幸運に巡りあうことができるのです。

 この本のキーワードはライト・タイム、ライト・プレイスです。・・・

 ふっと思うは神の心、あれこれ思うは人の心、という言葉があると聞いています。あまり計らずに、ふっと思う時と所を得ますと、潜在していた蔭の可能性、「お蔭さま」が、ご縁という形で顕われ向こうからやってきます。それは今の自分にとって都合のよいことだけとは限りませんが、そのことによってふっと気がつくことがあります。そのご縁が都合のよいことであれ、都合の悪いことであれ、すべて自分の経てきたことの顕われとあきらめれば、解決の方法はおのずと開けてくるようです。

 ご縁に身を委ねる、このことが私にはもっとも合理的な生き方のような気がいたします。