まとまらない人

まとまらない人 坂口恭平が語る坂口恭平

 躁鬱の波に流されながら・・・なのか、波乗りしながら・・・なのか、なんとか息がしやすいように、少しでも健やかでいられるように、いろんな工夫をしながら生活している坂口恭平さんの本。

 この「まとまらない人」は「おそらくけっこうな躁状態だった」ときに、編集者の方に話しまくったことを収めたものだそうで(確かにすごくパワフルですが、一方で話に深みも感じます)、興味深く読みました。

 

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 前は、頭の中でどんどん分裂して好き勝手にやろうとしてるのを縛ろうとしてた。分裂すること自体が怖かったんだと思う。分裂しないようにしないようにって慎重にやってた。今は、もっと分裂してもいいと思ってる。昔は、立て付けの悪い家じゃ隙間風も入ってくるし、寒いし、暑いし、嫌だからって、密閉された空間を作ろうとしてた。でも、それだとすぐに息苦しくなるんだろうね。今は隙間風が入ってきても気にしない。これっていうテーマなんかなくていい。ないほうが自然で、体から出てくるままに形にしていくほうがいいと思ってる、形にすること自体をしなくて考えてるだけでもいいんじゃないかとも思ってる。分裂して、一貫性もないし、飽きたらすぐやめて、次のことはじめて、前のことなんかすっかり忘れてる。それでもいいんじゃないかって思ってる。そっちのほうが面白いと思ってる。何よりもそっちのほうが自分にとっては健やかでね。

 僕は「新政府」で売れた。そのときのことを研究して、同じことを続ければいいのに、あえて、きちんと、ノイズをいれていく。でも、単純に僕はなんでもやってないと体に悪いから、体がそういうことを求めてくるんだろうね。だから、何者にもなり得ない。どこかで落ち着いて、こういう人ってことで進んでいってくれない。

 本当に僕、胡散臭いな。狙ってるところもあるけど、結局ナチュラルボーン胡散臭い人なんじゃないかな。だからいろんな人に嫌われてるのかもしれない。あまりそう感じたことはないけどね。いろいろ変なこともやってるのに、胡散臭いのに、炎上はしないしね。・・・文句があれば僕に直接電話かけてこれちゃうわけだから。しかも、電話番号公開して8年以上経つけど、一度もそういう電話はかかってきてない。この世の中は、ちゃんと晒せばプライバシーもちゃんと守られるってことなのかもしれない。まあ、僕に文句を言っても、なんの足しにもならないから。まったく役に立たないやつでいるってのは大事かも。なんか知らんけど、ニコニコしてときどき死にそうになってそれでも明るく生きている。攻撃しても無駄って思われてるのかな。無視しておいたほうがいいってことなのかも。おかげで結構気楽に生きられてるよ。それでも自分で鬱になって追い込むし。本当にわけがわからない。