もっとだらだらしたら?

アフリカ出身 サコ学長、日本を語る

 なるほどそうだなぁと・・・やっぱり日本は全体的に「ちゃんとしてる」んですね。

 

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 私が日本に来て一番怖かったのは、この日本社会は、どこに「オン」と「オフ」があるかがわからないことだった。ずっと「オン」にしっぱなし。学校も家も社会も趣味も、全部「オン」。

 趣味といったら、まるで専門家のような勢いになるので、ビックリする。

「映画を見るのが趣味で」と言ったときには、映画オタクが近づいてきて、〇〇監督のあの作品のこのアングルが、撮り方……って、うんちくを垂れてくる。

 なんやねん!知らんわ!

 こっちは、軽い気持ちで映画を楽しみたいねん!

 コスプレーヤーのことをあまり知らずに授業で軽い発言をしたときには、受講者の一人が研究室に来て、コスプレについて延々二時間教えてくれた。コスプレーヤーがいかにキャラクターに対する知識とリスペクトを持っているか、ということをご丁寧に教示してくれるのだ。

「あ、そうなんや。服着て遊んでるんちゃうんか」と言うと、服を手作りしていること、それにかける時間とキャラクターとのコミュニケーションの重要性、思いを寄せ合っているんだとか、ものすごく細かく聞かされた。

「え、この子、どこでリラックスするの?」

と、正直そんな気持ちにもなる。

 ・・・

 果たして日本人には、本当の意味でだらだらしたり、何もしないでボーッとしたりする時間はあるのだろうか。

 いつも頭や心を働かせ、どんどん何かに接続するために、どんどん詰め込んでいく。やはり日本人は、心も体も縛られるのが好きで、時間に縛られるのも好きなのだろう。小中学校からの教育システムがそのようになっているのだから、本当に難しい。

 だらだらできないような国民性。常に将来につながることをやっていないとダメだという空気。何かの役に立っていなければ生きられないようなプレッシャー。就職が全てだという思い込みや、社会のシステム。それらのことと、引きこもりや自殺というのは、全てつながっているのではないか。

 日本人よ、もっと肩の力を抜こうぜと、私は言いたい。