フィギュア・スケート関連の本ばかり読んでますが(笑)
宇野昌磨さん、緊張するときは緊張するそうですが、いつ見てもマイペースに見えて、かといって、周りに対する気遣いもあり、面白い魅力のある方だなーと思っていたら、ああそんな感じなんだ・・・というエピソードがこの本に載っていました。
P98
・・・2016年、アメリカ東部のボストンで行われた世界選手権・・・
この大会で、昌磨は7位という結果に終わった。
ショートプログラムは4位という位置につけたのだけど、フリーでミスが相次いだため、順位を落として、試合を終えることになった。
試合のあと、昌磨は、とんでもなく落ち込んだそうだ。
「もう、僕は何をやっても駄目なんだ、駄目なんだ」
このシーズンは、昌磨がシニアに上がって最初の年だった。そこで、出場権をつかむことができた初めての世界選手権だった。
大会に向けて、強い意気込みがあったんだと思う。
昌磨は、これ以上ないというくらい、しっかり練習を積んで臨んだ。
練習だけではなかった。生活態度も改めて、いわゆるきちんとした生活を送るようにしていた。
「やるべきことは、やった」と言えるくらいの準備をして、大会を迎えたはずだった。
なのに、とてもじゃないけれど、満足というのは程遠い演技しかできなかったから、「こんなにやったのに」、と心の底からがっくり来たのだと思う。
あまりにもひどい落ち込み方に、美穂子先生と母は「目が離せない……」と、心配するくらいだった。
・・・
大会のあと、昌磨に変化が起きた。
ふだんも、そしてどんな大会の前でも、自然体で過ごすようになったことだ。
生活面からきちんとして、練習もめいっぱい頑張って、あらゆる面で備えて臨んだ大会だったのにいい滑りができなくて、特別な準備をすることに意味がないと悟ったらしい。
それからは食べたいときに食べ、眠りたいときに眠るようになっていった。
その方が、昌磨らしかった。
P132
昌磨は、感受性が強い人だなと思う。
・・・
それに、人にとても気を遣い、優しさや思いやりも持っている。
・・・
・・・昌磨と同じ高校の先輩から聞いた話だ。
高校で、昌磨と仲の良い子が、1人で泣いていたとき、黙ってずっとそばに座っていたことがあったのだという。
何も喋らずに、座っていただけ。
その子が泣きやんだとき、昌磨が座っているのに気づいてびっくりし、「昌磨、いたんだ!」って言ったら、昌磨は、こう答えたそうだ。
「うん、何かほっとけなくて」
昌磨は、人の気持ちを傷つけないように、考えて喋る。
自分の言葉で、人が傷つくのを極端に避けて話す。
でも、人から傷つけられることを言われても黙るだけ。
言い返したりはしない。
「我慢すれば、ここで終わるから」
小さい声で、教えてもらったことがある。
信じている人以外からは、何を言われても「面白っ!」って、全然気にしない。
・・・
「関係ない人に、何を言われても気にならないんだ。どんな風に書かれても、言われても、かえって面白いんだ」
そう答える昌磨に、強いな、と母は思ったという。
でも、信じている人の言葉は、心で聞く。
知っている人の言葉には、落ち込んだりもする。
そんな昌磨を、まわりの人は、みんな知っている。