挑戦しよう、では子どもは動かない

麹町中学校の型破り校長 非常識な教え (SB新書)

 これも大事だなぁと思いました。

 日常の中で親が子にこの姿勢を徹底するのは、かなり難しいのでは?と思いましたが・・・(;^_^A

 大人になった自分が、自分自身に、こういう態度で接して、こんな声かけをしてあげられたら、とてもいいセルフケアになりますね。

 

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 小さい時から周囲の大人たちに厳しく育てられた結果、自信を失った子や、評価を過剰に気にする子、失敗をやたらと恐れる子はたくさんいます。そんな子どもだちに挑戦意欲を取り戻してもらうためにはどうしたらよいか。そのために重要なのは、「心的安全状態」をつくってあげることです。

「心的安全状態」とは、心理学用語で、周囲の反応を気にしないで自然体の自分を表現できる環境のことです。

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 では具体的に心的安全状態をつくるにはどのような方法があるでしょうか。

 2つの方法が考えられます。ひとつは・・・「失敗してもOK」の環境を用意することです。麹町中学校でも「失敗OK」「人と違ってOK」の文化を徹底しようとしています。

 しかし、実際にいまの日本の教育現場の全体がこの環境になっているかと言われると、そうとは言い切れません。何かに興味を持ったら「余計なことをせず、勉強だけしていなさい」と言われ、やって失敗したら「何をやっているんだ!」と怒られる。これでは挑戦意欲が衰退して当然です。とはいえ、これは学校だけの問題ではなく、社会全体の問題でもあるかもしれません。世の中は、心的に危険な状況を生み出す要因で溢れています。そんな環境のなかでも、それらをストレスだと感じなければ、いいわけですが、どうすればよいでしょうか?

 それは、子どもたちの脳を心的安全状態が「つくりやすい」脳に変えてあげることです。そのひとつの方法が、第3章で解説した予測能力や感情のコントロール術、合意形成力などを高めること。「世の中は自分に都合のいいことばかりではない」と日頃から教えると同時に、「都合の悪いことがおきたとき、自分の感情がどう反応するか」に意識を向け、感情のコントロールの仕方をアドバイスしていく。

 それを繰り返していくうちに自分を冷静に見る能力が高まるので、ストレスの量を減らすことができます。しかも、予測さえ立てておけば、できるだけストレスを感じないよう行動を変えていけるので、挑戦意欲を維持しやすいのです。

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 もうひとつ「心的安全状態をつくりやすい脳」に変えていくために大人ができることといえば、「失敗は悪いことではない」と教えつづけることだと思います。

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 子育ての本でよく言われることですが、失敗を恐れない子どもに育てるコツは結果ばかりを褒めないことです。・・・

 そういう言葉かけを続けてしまうと、いつの間にか子どもは「1位になること」や「レギュラーをとる」といった「結果」にこだわる子どもになります。

 ・・・周囲の大人が勝手につくった期待に満たないからと自信を失う子どもを見るのは、教育者として非常に辛いものがあります。

 そうした事態を避けるには、結果ばかりを褒めずに、子どもたちの工夫や試行錯誤といったプロセスをちゃんと褒めてあげることが重要です。

 ただし、プロセスを褒めるといっても、「頑張ったね」という言葉には注意が必要です。私もついつい言ってしまうことがありますが、「頑張ったね」という抽象的な褒め方だけをしていると、いつのまにかガッツや根性といった精神論にすり替わっていきます。・・・

 ではどうすればよいのか。理想的な褒め方とは子どもなりの工夫や試行錯誤しているプロセスを、大人が言語化してあげた上で褒めることです。

 たとえば子どもが自発的にサッカーのリフティングの練習をしているなら、「なんでリフティングの練習をしているの?」と聞いて、「ボールキープが苦手だから」と答えたら、「なるほど。弱点を克服しようとしているんだ。えらいね」と褒めてあげる。

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 すると子どものなかに「ネガティブなものとして捉えられている弱点を克服しようとしているポジティブな自分」がメタ認知として定着していきます。

 子どもが失敗したときのフォローも大切です。・・・「次は頑張ろうね」という言い方も暗に「今回は頑張らなかった」と言っているのでフォローになっていません。人は失敗から学べると意識づけるためには、上手くいかなかった原因や、逆によい面を伸ばすところに焦点を合わせて、課題設定や具体的な手法に目を向けさせることが大切です。・・・