矢野顕子さん

やのぴあ

 図書館で何気なく本棚を見ていたら、やたら楽しそうなこの本が目に留まりました。

 自分には見当たらないほどの自由さを、いいな~と思いつつ、この糸井さんの文章を読んで、私もそう感じてる(;^_^Aと思い当たりました。

 

P90

 デビュー40周年ということですが、僕の矢野顕子体験もそこまで遡ります。・・・コンサートに行ってるんです。すごい新人がデビューするというので。・・・

 そのときは、こちらが反感を感じるほど自由な人だなと思いました(笑)。とにかく過剰にノビノビしてるんです。もちろんそれは彼女の元々の資質なんですけど、でも、デビューしたてなんだから(笑)。ノビノビしてる。あるいは物怖じしない。悪びれない。悪くないんだからいいんですけど(笑)。この姿を見ていたらね、なんかこう、こちらが自由じゃない人みたいに思えちゃったんですよね。

 だって新人にしちゃデカすぎるだろ、態度がって(笑)。まあ、反感とまでは呼べないけれど、何かのわだかまりのようなものが僕の中にできたのを覚えています。あんなことは初めてでしたね。ステージで生意気なことを言うわけでもなく、ただ、そこにいて曲をやっているだけなんですから。思えばその日から、ずっと変わってないんですよ(笑)。

 でもそれは「音楽が素晴らしいからなんだよ」っていうことになるんです。その素晴らしさにオリジナリティがありすぎるから、何かと比べることもできない。「ナニナニみたいにいいんだ」って言えないですから。だから、彼女の音楽にポンとつかまれた人は「いい」って素直に言えるけど、「すいぶんと過剰に自由な人が、不思議な音楽をすっごく楽しそうにノビノビとやってる」という状況にいきなり置かれると、「これはなんだろう?」って。帰り道はそうなるんですよね(笑)。