短所は短所のままでいい

野球にときめいて―王貞治、半生を語る

 王貞治さんの本を読みました。面白かったです。

 

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 僕は不安定な一本足打法をしっかりとしたものにしたかった。一本足打法で一年が過ぎた段階でも、相手投手たちは「タイミングさえ外せば打ち取れる」と考えていたからです。

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 一九六三年春のオープン戦だったか、宇都宮球場で大きな本塁打を打ちました。右翼場外に幅一〇メートルほどの空き地があってバスが止まっていたのですが、打球はその上を越えて林に消えたそうです。

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 実を言うと、この頃までは一本足で打ったり、二本足に戻したりしていました。このシーズン前のキャンプでも、荒川さんと二本足に戻そうか検討していたほどです。

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 王の一本足打法はあくまでも途中の段階なんだ、いずれは二本足に戻すんだと荒川さんは考えていた。だから二本足で打てと指示されたことが何回もありました。

 しかし、僕は足を上げないと不安だった。一本足打法にこだわっていた。

 僕は、長所を見るべきだと思うのです。短所は短所のままでいい。長所を伸ばすことで短所を補うほうがいいという考え方です。今の世の中はどちらかというと、短所と長所の両方を同じぐらいに見ている。こっちを良くして、同時にこっちも伸ばそうと考えている。

 欲張ってはいけません。

 だから、三振が多くてもいいと考えています。三振が増えた分、本塁打が増えればいい。打者に対して、三振を増やさずに本塁打を増やそう、打率を上げようという要求をするのはナンセンスだと思うのです。両方を求めて、結局アブハチ取らずになっているケースが多々ありますものね。