リアルな像を結ぶまで続ける

直撃 本田圭佑 (Sports Graphic Number)

 リアルな像を結ぶまで何度もシュミレーションし続ける、こういう感じでやるというのがわかりやすく語られていました。すごい大事なことだと思います。

 

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 6万人の目の前で、W杯出場が決まるPKを蹴るのは、どんな強心臓の人間であっても堪え難い重圧を感じるだろう。・・・

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 本田圭佑は両肩をストンと落として力を抜き、目をつぶりながら息を深く吐き出すと、左足を振り抜いてど真ん中にボールを突き刺した。日本サッカーの未来に、新たな理想像を示すかのように。

 ピッチでマイクを向けられると、本田は観客の反応を楽しむかのように言った。

「真ん中に蹴って取られたら、しゃーないなというぐらいの気持ちで蹴りました」

 失う物がとてつもなく大きい状況で、まるで親善試合でもあるかのように大胆に振る舞うことができる―。恐るべきメンタルの強さだ。

 この剛胆さはどこから生み出されるのか?

 その謎を解く鍵は、日常の過ごし方にある。

 2010年の南アフリカW杯後、本田がこんなことを言っていたのを覚えている。

「家にいるときが勝負。1時間でも、30分でも、ひとりの時間を作らないといけない。繰り返し試合をイメージして、それが頭の中に出てくるようにするんです」

 洗脳―。本田はこの作業をそう呼ぶ。本番をイメージして、イメージして、それがリアルな像を結ぶまで何度もシミュレーションし続けるのだ。

 のちに聞いたところによると、CSKAの練習場でFKやPKを蹴るときも、まわりにある森が、〝6万人の観客〟であると想像するそうだ。「どれだけリアルに大舞台の重圧をイメージできるかが、練習における成長度を決定づける」。居残り練習さえも、W杯と同じテンションで取り組んでいるのである。

 普段の生活において、常に目標を深層心理に刷り込むのも習慣のひとつだ。

 本田はオランダでも、ロシアでも、自分が暮らす部屋の壁に、その時点における目標を紙に書いて貼り付け、24時間意識するようにしてきた。目標と言っても、途方にくれるような大げさなものではない。100%の努力をすれば、手が届きそうなものだ。その紙が張り替えられるたびに、本田は新たな武器を手にする。

「オレの中では、勝負の前に、だいたい勝負は決まっている」