パワーのコントロール

善く死ぬための身体論 (集英社新書)

 凶暴なパワーをなくすようにするとかじゃなく、危険ならコントロールすればいいのだということ、なかなか難しいことだとは思いますが、心理療法にもつながるなと、覚えておこうと思いました。

 

P191

成瀬 小学校入学までは、疎開先の群馬県で暮らしていました。・・・

 ・・・小学校入学のタイミングで東京に来ました。入学式の時、いきなり何百人という児童が一ヵ所に集まっている光景を見て、パニックになってしまったのです。・・・いきなり大勢の子どもを目にしたことで、周囲がすべて敵のような感覚に襲われました。訳がわからずに暴れ出した僕のことを数人の人が抑え込もうとしたけれど、抑えられなかったようです。・・・

 そのことから、自分の中には、驚くほど凶暴なパワーが存在していることを知りました。小学校卒業までに、いきなり凶暴スイッチが入って暴れ出したことが数回ありました。ただ、その何倍もスイッチが入ったことがあったのですが、その都度コントロールして、暴れ出すのを抑えていました。小学校の六年間で、自分自身をコントロールする能力が磨かれたと思います。中学以降は、一切凶暴スイッチは入っていません。ただ今でも、自分の中に驚くほどの凶暴なパワーが存在しているのは確認できます。それがあるからこそ常に自己コントロールできる瞑想能力が身についたのだと思います。その「凶暴スイッチ」を解放したら、今でも誰にも止められない事態になることは予測できます。そういう爆弾を抱えているからこそ、ヒマラヤの崖の上で瞑想したり、危険な氷河の氷壁を背にして瞑想できるのだと思います。