ホタルとルシファー

遺伝子はダメなあなたを愛してる (朝日文庫)

 あのホタルと堕天使ルシファーにつながりがあったとは。こちらもへぇ~でした。

 

P186

 ホタルはどうやって光を出すのでしょうか。それは生物がエネルギー源にしているATP(アデノシン三リン酸)を使って、ルシフェリンという発光物質を酸化するという方法によってです。酸化とは〝燃やす〟ことに他なりませんが、ホタルのお尻では、火をつけて燃やすのではなく、ルシフェラーゼという酵素が酸化反応を実に巧みに進行させています。これがホタルの冷たい光の秘密です。太陽光エネルギーをATPに変える植物の光合成酵素反応です。生命が何億年もかかって作り上げた巧妙なエネルギー変換のしくみに、人間の工学はまだ太刀打ちできません。植物が光を捉える能力(電荷分離効果)はほぼ100%近いのですが、太陽電池は今のところせいぜい10%です。

 ホタル発光のしくみの名前は、天国を追放された堕天使ルシファーに由来します。風雅な命名ですね。もともとルシファーとは光をもたらす者というラテン語で、派生語のルクスは明るさの単位です。・・・