放っておいても明日は来る

放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法

すごく面白い本でした、というか、すごく面白い人ばっかり出てくる本でした。

どんな内容かというと・・・

 

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 J大学で頼まれて半年ほど講義を行った・・・講義名は「東南アジア文化論」というのだが、私にそんな難しい話ができるわけがない。しばし悩んだあげく、「東南アジアを生で体験している人を呼んで話を聞こう」という結論に達した。タイ、ミャンマー、マレーシアなどの国に暮らしたことのある人をゲストに招き、私と対談してもらうことにした。これなら実のある話を学生に聞かせることができ、私も勉強できて一石二鳥だ。

 ・・・

 さて、そこで怪奇現象並みに不思議なことが起きた。ゲスト全員が組織に属していなかったのである。いずれもフリーもしくは自分で会社を興した起業家だった。好きなことを強引に仕事にしてしまったという人や気の向くままに生きていたら何となく仕事になっていたという人ばかりで、ユニークというか奇人変人というか、とにかくみなさん変わった経歴ばかりだ。

 ・・・東南アジアの文化を話してもらうつもりだったのに(その話もしているのだが)、いつの間にか「どうやって外国で人生を切り開いたか」とか「仕事はどうやって見つけたか」みたいな話ばかりになっていた。しかもそれが滅法面白い。笑いすぎて腹が痛いこともしばしばだった。

 この講義は学生たちにたいへん好評だった。・・・

 対談が好評なのもさることながら、意外だったのは学生たちへの受け方だ。てっきり私は「ゲストたちのぶっ飛んだ話が刺激になるだろう」と思っていたのだが、ちがった。彼らは「癒されます」と言うのだ。

 癒される?何に?

 彼らの話を聞いて驚いた。今の学生は三年生から就職活動がはじまり、それが卒業まで延々と続く。面接の勉強をし、「心理本」を読みあさって自分の適性を考える。そんなことをやっているうちにすっかり疲れ果ててしまう。・・・

 なのにこの講義に出るとどうだろう。ゲストたちはまるで口裏を合わせたように、「明日のことなんか考えない」とか「てきとうにやっててもなんとかなる」と堂々と言い放つ。実際にゲストの人たちは決して有名人ではないし社会的に特別成功しているわけでもないが、好きなことをとことんやっていて、元気に生きている。

「ああ、人生はなんとでもなるんだなって思うと気が軽くなって、就活にも余裕が出てくるんです」と彼らは言うのである。

 ・・・「本にして就活コーナーに置いたら売れますよ」と具体的にアドバイスしてくれる学生までいた。

 というわけで、このたび、学生諸君の意見にしたがい、本として出版することにした。