曽野綾子さんが拝読したというこの詩、とても印象深かったです。
P176
私は産経新聞の「朝の詩」の愛読者だが、五月十五日付の宮川優さんという方の詩は、文学的な気分を離れて、強烈な社会的な意味にうたれて拝読した。引用しなければ、記憶しておられる方も少ないかもしれないので、再びご紹介させて頂く。
「凧が空高く飛べるのは
誰かが糸を
引っぱっているから
でも凧は
その糸さえなければ
もっと自由に
空を飛べると
思っている
その糸がなければ
地上に
落ちてしまうのも
知らずに」
(中略)
凧の糸は、失敗、苦労、不運、貧乏、家族に対する扶養義務、自分や家族の病気に対する精神的支援、理解されないこと、誤解されること、などのことだ。それらは確かに自由を縛るようには見えるが、その重い糸に縛られた時に、初めて凧は強風の青空に昂然と舞うのである。