こんな変化も

五感経営 産廃会社の娘、逆転を語る

工場見学は、こんな変化ももたらしてくれたそうで・・・褒められるって大きなことですね。

 

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 私の父は創業者で、いわゆるカリスマ経営者です。社内でも業界でも圧倒的な存在感があり、ある種のオーラを背景に、何事も自分で決めて、自分で推進していく。

 そういう父のリーダーシップを、そのまま自分が引き継げるかといえば、私の力でできることとできないことがあるよな、と、最初から感じていました。

 だから、自分は自分、父は父。父のやり方と私のやり方は違って、父がいわゆるトップダウン型なら、私はボトムアップ型だ。みんなの意見を吸い上げる仕組みをつくっていくことこそ、2代目経営者の役割じゃないか。そんな思いがあったからこそ、「自分の頭で考えようよ」と、社員に呼び掛けたのです。

 けれど、・・・そんな私の姿勢が、社員には自信のなさに映るらしい。弱気で甘えた社長だと不安を与えるらしい。

 それなら私は一体、どうすればいいのでしょう。

 ・・・

 そんなリーダーシップにまつわる深い悩みに転機をもたらしたのが、工場見学でした。 

 前述の通り、最初に集まった数少ない見学者は、私たちのアラを見つけようと意気込むような方々。けれど、厳しい指摘に真摯に向き合い、対応するうちに評価が上がり、一般の見学者が増えていきました。

 すると、びっくりするようなことが起きました。

 社員が変わったのです。それも自発的に。

 なぜでしょうか。

 答えは明快。褒められたからです。

 そのころの石坂産業の社員のレベルは、経営者の私の満足度はさておき、客観的に見れば、結構いいセンまで行っていたのです。スパルタ指導の成果であるのは痛しかゆしですが、見学者が通りかかれば目を見てきちんと挨拶するし、工具は所定の位置にキチッと置かれて、掃除も行き届いている。

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 その声を社員に伝えると「そうか、自分たちはすごいのか」と驚き、少しはにかみながらも喜び、「もっと頑張ろう」と意気込む。それだけで、挨拶も清掃も以前よりずっと丁寧になるのです。