エネルギーを見る

無限の本質―呪術師との訣別

私たちはエネルギーを見ているけれど、それを意識してないだけ、という所、その通りだなと思いました。

P94
 「呪術師だからといって」と、ドン・ファンが説明を続ける。「魔法を用いるわけではないし、人びとに効用をおよぼしたり、霊に取り憑かれたりするわけでもない。呪術師であるということは、想像もおよばないことを可能にする意識のレベルに到達することだ。〝呪術〝という言葉は、呪術師の行いを言い表すのにはふさわしくない。〝シャーマニズム〝という言葉にしたって同じだ。呪術師の行為はもっぱら抽象観念の世界、非個人的領域に属する。呪術師はある目標に到達しようと奮闘するが、その目標は普通の人間が追い求めるものとはまったくちがう。呪術師の望みは無限に到達すること、そしてそれを意識することなのだ」
 ドン・ファンはさらに言葉を続け、呪術師の仕事は無限に立ち向かうことだと語った。呪術師は毎日、無限のなかへ潜っていく。ちょうど漁師が海へ潜るように。それはきわめて困難な仕事なので、潜るまえに呪術師は自分の名前を名のらなければならない。ノガレスで初めて会ったとき、ふたりのあいだに交流が生じる先に、ドン・ファンは名前を名のった。あれは、名前を名のることによって、無限の前で自分が一個の人格を備えた存在であることを主張していたのだ。
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 私の目をまともに見つめながら、ドン・ファンはつぎのように語った。人間を呪術師たらしめるのは、宇宙を流れるエネルギーを直接知覚する能力である。呪術師がある人間をそのようなしかたで知覚するとき、呪術師には輝く球、ないしは輝く卵形の姿が見える。人間は宇宙を流れるエネルギーを直接見ることが可能なだけでなく、現にエネルギーを見ている。ただ、見ていることを意図的に意識していないだけなのだ。
 ・・・それから彼は、「意識」をエネルギーと定義し、「エネルギー」を不変の流れと定義した。この流れは光り輝く振動であり、決して停滞することなく、つねにみずから動いている。さらにドン・ファンはこうも言った。ある人間を見るとき、その人間は、宇宙のもっとも不思議な力によって結びつけられているエネルギー場の集合体として知覚される。不思議な力とはすなわち、結合力、凝集力、振動力であり、それがエネルギー場を結びつけて一つの単体に保っているのである。・・・