「されど愛しきお妻様」の夫、鈴木大介さんの脳梗塞後の高次脳機能障害の回復過程を追った本です。
症状を主観的に、実感としてはどう感じているか、すごく参考になりました。
わかってもらえなかった体験もたくさん載っていて、「患者の訴えをちゃんと聞いてほしい」という言葉の「ちゃんと」がどういうことか、改めて心にとめたいと思いました。
P66
・・・残念ながら僕が抱えることになった障害のほとんどは退院後にあらわになり、混乱の中、手探りでその解釈を進めることになった。
ここまでに記した、「自分が他人になったような感覚」だとか、「就寝前の七転八倒の窒息感」なども、退院後になってより強く僕を苦しめるようになり、その原因を担当医からもリハビリのスタッフからも説明されることなく、なんとか自力で闘うしかなかった症状だ。
……と真面目に書きながら、ハタと気付いた。ああ、真面目に描写すればする程、とてつもなく深刻な雰囲気になってきてしまうではないか。確かにあらゆる障害は堪え難い苦しさを伴ったものだった。けれども実際に障害と向き合った僕は、そこまで深刻じゃなかったし、苦しい苦しいと言いながらもそこまで悲観的ではなかったと思う。なぜなら露呈していく障害の考察と対策は、「脳コワさん」命名者のちゃらんぽらん女王=我が妻と二人三脚で行っていったからだ。
・・・
そして、その妻の命名によれば、高次脳機能障害の僕に起きた症状・障害は、こんな言葉に置き換えられることになるのだ。
・井上陽水
・架空アイドル現象
・夜泣き屋だいちゃん
・口パックン
・イラたんさん
・初恋玉
君、ふざけてるのか!?と思うが、意外や意外。それぞれの症状による苦しさは、こうして変なネーミングをされたことで、すこしだけ苦しさが和らいで、すこしだけ立ち向かい易くなった気がする(ような気がする)。