量子力学とは

「科学にすがるな!」――宇宙と死をめぐる特別授業

シュレディンガーの猫の話は、量子コンピューターへとつながり…
「もの自体の法則性と、人間がそれを見たときにどう認識するかの法則性が、ごっちゃになっているのが量子力学だとぼくは考えている。」というところ、よくわからないのに(^_^;)なるほどと思いました。

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「あのう、ほんとうに猫の生死が重なっているんですか?」
「現実に重なっているという理論で、携帯もパソコンも動いている」
 ・・・
 ふつうのコンピューターでは、1と0ですべての数を表す。裏と表に1と0の数字を書いたカードが並んでいるようなものである。三枚のカードがそれぞれ1,0,1と出すと、101という情報になる。正解が出るまで2×2×2=8とおりの数字を一つずつ見せていく。
 しかし量子力学を採用したコンピューターでは、「カード」ではなく電子を使う。電子は量子力学の法則にのっとったミクロの物質だから、常時1と0の状態が重ね合っていて、答えが瞬間にぱっと表せる。電子一〇個で約一〇〇〇の状態を扱え、四〇個で一兆もの状態が扱えるらしい。数少ない電子で、膨大な量の計算をいっときに行えるのだ。
「いまはまだ一〇個くらいの重なり具合しか実現していないが、それを何兆個にもしようとしている。するとスピードの差は歴然としてくるね」
「まるで人間みたいです」
 また叱られないだろうかと思いながら、私はいった。
「私という人間は、いろんな面が重なっています。でも、ある人が私に意地悪をすれば、私もその人に意地悪な人間として相対する。別の人がやさしい言葉をかけてくれたら、その人にはやさしい人間として対するでしょう。他人によって私はある一面を見せるが、そういうのをすべて合わせたものが私である。それと同じだなって」
「いや、そうなんだよ」
 思いがけない反応に、私はちょっとびっくりした。
「あなたがいうのは、こういう意味でしょ。人間の気持ちなんて、たしかにいろんな状態が重なっている。可能性Aと可能性Bと可能性Cをひっくるめて、われわれは生きています。それが、あるときいっぺんに一つの可能性に絞られる」
 ええ。
「ぼくはこう考えているんだ。量子力学は、物理でいう「もの」ではなくて、人間のあり方、つまり情報みたいなものに関係しているのではないかとね」
 ・・・
「もの自体の法則性と、人間がそれを見たときにどう認識するかの法則性が、ごっちゃになっているのが量子力学だとぼくは考えている。つまり量子力学は、従来の物理学みたいなものと、そうではない情報みたいなものとの、二つの部分からなっているというのが、ぼくの最近の主張です」