工夫でしのぐ

ダメをみがく―“女子”の呪いを解く方法

「適性」「工夫」「風向き」でなんとか「しのいでる」というお話。
なんとかしのぐっていうのも大事だなと。

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深澤 私も大事なのは「工夫」だと思ってるんですよ。「努力」でもなく「がんばる」とかでもなく「工夫」だなと。この対談はダメがテーマだけど、「ダメ」とか言ったって、人から見たら、津村さんは芥川賞作家だし、私もコラムニストやコメンテーターだし、ダメじゃないし「成功」してるじゃんって感じじゃないですか。

津村 そうなんですかねえ。

深澤 「成功」の秘訣は「才能」「努力」「運」ってよく言われますけど、私たちのは「成功」じゃなくて「なんとかしのいでる」状態だって思うし、「才能」じゃなくて「適性」、「努力」じゃなくて「工夫」、「運」じゃなくて「風向き」だと思ってるんですよ。

津村 ははは、なるほど。

深澤 津村さんの文章の能力は、ある程度はDNAに書き込まれているだろうし、成育史もある程度は関わってる。私の「口が達者」なのもそう(笑)。才能じゃなくて、たまたま今のメディアの世界に合った適性だと思うんですよ。それにこの適性だってよいものとは限らない。その適性があるために人を傷つける面もある。

津村 うん。あると思います。

深澤 私の「口」なんて、余計なことばかり言って、どれだけの人を傷つけてきたか、申し訳ないと思ってます。たまたま小説を書く適性があったとか、企画をまとめたりする適性が私たちにはあった。それプラス、「努力」とかじゃなくて、「工夫」にかける熱心さが、私も津村さんも多かったと思うんです。

津村 工夫は大事だと思います。なんで工夫してきたか?っていうと、自分はマイナスからの出発やから、工夫せなみんなと同じになられへんってことを、幼稚園ぐらいのときに強制的に気づかされたから。・・・
・・・
深澤 工夫は必要ですよね。私は家族との関係も悪かったし、本当に"人間オンチ"だから、うまく生きていこうと努力すると、絶対に空回りするんですよ。最初の会社でうまくいかなかったのも、その後の仕事でうまくいかなかったのもそれが原因だし、がんばりとか努力は、受け取る相手次第だから、必ずしもうまくいかない。でも工夫は自分だけのためのものだから、私を裏切らないんです(笑)。・・・
 工夫は、失敗しても「しょーがねえなあ」って思えるけど、努力が失敗するとそうはいかないじゃない?(笑)・・・
 工夫して失敗したとしても、使うアプリを間違えたようなもので、「あー、このアプリじゃうまくいかなかった」「このアプリは私には合わなかった」って思える。でも努力して失敗すると自分の本体自体がダメな感じに思っちゃいますからね。だから、津村さんと私の共通点は工夫だと思うんです。