何がしたいかを知っていること

宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由

この辺りを読みながら、私は自分が何をしたいかというよりも、何がしたくないか、何が向いてないか、はよくわかってたなと思いました(^_^;)

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 童話『ムーミン谷の夏まつり』の中で、スナフキンがこんなことを言う場面がある。
「大切なのは、自分のしたいことを、自分で知ってるってことだよ」
 これこそ、もしタイムマシンがあったならば、悩んでいたあの頃の自分にかけてやりたい言葉だ。あの頃の自分は、たとえばこんな風に考えていた。「自分の能力を最も活かせる仕事はなんだろう」と。僕の間違いは、人の「能力」というものを、たとえば車やコンピューターの性能のような、不動の特徴と考えていたことだった。車ならば西に向かって走ろうと東に向かって走ろうと同じスピードを出せる。だが、僕という人間は、宇宙に向かって走るのと、金融に向かって走るのでは、まるで出せるスピードが違った。人の能力は機械のスペックではない。最大の性能を出すには、夢中になる必要があるのだ。だから結局、僕は自分がやりたいことに向かって走るしかなかった。そして幸いにも、自分が何をやりたいのかを思い出すことができたから、その後も走り続けることができた。
 あるいは、僕はこんな風にも考えていた。「自分が最も社会に貢献できる方法は何だろう」と。だが、それが心からやりたいことでなければ、結局大した社会貢献なんてできなかっただろう。それに、あの頃の僕は素直ではなかったと思う。もちろん「社会貢献」をしたいというのは嘘でも偽善でも全くなかった。だが、いかんとも「社会貢献」という言葉は使い勝手が良い。だから、無意識的にではあるにせよ、自分の迷いや悩みや不安を包装紙でラッピングするように包み隠し、体勢を整えるために、「社会貢献」という言葉を使っていた気がしてならない。
 今の僕は自由だ。僕は自分が何をしたいのかを知っている。そしてそれに素直に生きている。一切の躊躇いも悩みもない。そしてそれに向かっていくらでも頑張ることができる。結局、探していたものはこれほどまでにシンプルなものだった。
 だからこそ思う。一番大事なのは、自分が何をしたいのかを知っていることなのだと。たとえば、大人は勉強しろと子供を叱る。もちろん勉強ができることは大事だ。だが、僕は勉強ができたからJPLNASAジェット推進研究所)に行けたのではなく、JPLに入りたかったから勉強を頑張ったのだ。