陽の下で

最高の贈り物―’98年版ベスト・エッセイ集 (ベスト・エッセイ集 (’98年版))

こちらも同じシリーズのエッセイ集。
司馬遼太郎さんに言われた一言というのが載っていました。
大事なことだなと…

P256
 彼―粂公一君と私は同時司馬さんのお勝手口を出入りするお附合いをさせて頂いていた。・・・
 ・・・
「そらそうと粂ちゃん、あんた結婚したとき司馬さんに何んや書いてもろたやろ」
「へえ、物は陽の下で想え、という色紙です」
「物は陽の下で想え」私も店を去るとき頂いたが、粂君と私にとって今は司馬さんの形見になった言葉である。
 人によってどうとでも解釈のしようもあろうし、受けとめ方も違うかも知れないし、又言葉の出自を司馬さんに確かめたこともない。しかしこの言葉ほどつらい思いやいやな思いをしたとき粂君や私を支えてくれた言葉はない。
 私なりには、モノを思うときは陽が落ちてからは止めなさい、相手を恨むか自分を必要以上にさげすむかにしかならない。モノはいつも明るく前向きで、開けっぴろげで考えることがいいよ。という具合に受け取っている。これも自分に都合のいい取り方かも知れないが、司馬さんの形見になったこの言葉を私も若い人々に伝えていきたいと思っている。