わが盲想

わが盲想 (一般書)

高野秀行さんが紹介していた「わが盲想」読みました。
すごく興味深く、読んでよかったー♪と思う本でした。
特に驚いたのが、アブディンさんの日本語力です。

P1
 ぼくは、一九七八年にスーダンの首都・ハルツームで生まれた。名はモハメド・オマル・アブディンだ。
 スーダンではファミリーネームという概念が存在しない。あえて当てはめると、ぼくの姓はアブディンだ。モハメドという名の人は掃いて捨てるほどいてまぎらわしいし、オマルは父の名前だが、それは日本のみなさんが子ども時代にお世話になったアレを連想させてしまうので、ぼくは日本に来て何年かたってから、アブディンで通すようになった。
 ・・・
 この本は、ぼくが日本へ来たいきさつや、東京という大都会での暮らし、東京に慣れ親しんだ後に、福井県の田舎の学校に通うようになった話、そして、夢を叶えるために再び上京した話。東京で出会ったさまざまな不思議な人々のことや、目で見たことのない日本を、見えない世界でどのように想像してきたかを読者のみなさんと共有したくて書くことにしました。
 盲人であるぼくの「盲想」が作り上げた日本像と、実世界の日本を比べつつ、楽しんでいただければうれしいです。
 あ、そうだ。ひとつ説明しておきたい。
「目が見えないのに、どうやって原稿を書くの?だれかに代筆してもらっているの?」
ゴーストライターがいるんじゃない?」
 ウェブ連載中に読んでくれた方からコメントをいただいた。
 自分で書いているのだが、なかなかイメージしにくいと思うので、ぼくがどのように書いているかお話しします。
 二十年前から、視覚障害者向けに、音声読み上げソフトという特殊なソフトの開発が本格化した。イヤフォンをつけてキーボードを打つと、打った文字を機械が読み上げてくれるのだ。インターネットや、ワープロソフトのテキストデータなども、その機械的合成音声で読み上げてくれる。
 ぼくは日本語で打っているので、漢字変換が必要になる。その場合、たとえば「ごとうさん」と打ちこんで変換キーを押すと、機械が「前後のゴ」「藤の花のフジ」などと言ってくれるので、正しい漢字が読み上げられたときにエンターキーを押す。
 ・・・
 さて、始まるぞ。
 盲想の世界へようこそ!