ブログ再開です(^^)
高野秀行さんの「世にも奇妙なマラソン大会」を読みました。
はずみでサハラマラソンに参加した話など、いくつか、なんでまた?(笑)という実話が載ってます。
面白かったです。
P3
私には「間違う力」があると言われる。本当にそれは「力」なのか、それとも馬鹿にされているだけなのかはよくわからない。
でも自分自身、「ああ、間違えちまった……」と認識することは度々ある。・・・
もちろんそのときは間違っているとは思わない。
「すごいことを発見してしまった!」「俺は超ラッキー!」「このチャンスを逃す手はない!」などと興奮している。その興奮は話が具体的に進むにつれ、「何か変だ……」「これは失敗だったかも……」に変化し、しまいには「ひえー、ダメじゃん!」「大失敗!」に変わる。
不思議なことに、「大失敗!」と気づいた時点でも、たいていはまだ引き返せる状況にある。なのに、いつも絶対に引き返さない。「まあ、乗りかかった船だし」と間違った船に乗りつづけてしまう。やりかけたことを途中でやめる機能が私にはついていないらしいのだ。やめるどころか、ますます勢いよく間違った方向に突っ込んでいく。
すでに間違っていると知っていながらその行為をつづけることは何か「任務」に似た陶酔をもたらすのだ。負け戦にあえて挑む高揚感にも似ている。
といっても、実は任務でもなんでもないからそこに意味はない。意味もないまま突っ走ってしまう。・・・
本書にはそのように間違えた事例が三つ収録されている。ド素人なのにいきなりサハラ砂漠でのフルマラソンに挑戦するはめになった「世にも奇妙なマラソン大会」・・・
・・・
・・・私はその頃、水泳のおかげで長くつづいた腰痛から解放され、体を使いたいという衝動にかられていた。ジョギングもはじめていた。「いつかはマラソンを走ってみたい」という思いと、「どうせ走るならユニークなマラソンがいい」という辺境愛好家の嗜好が合わさって、てきとうに検索してみただけである。
アフリカ・中東エリアにマラソンなんてあるのかと思っていたら、意外にもたくさんヒットした。・・・
・・・
・・・ひときわベタな名前が現れた。
サハラ・マラソン。
詳細を見なくてもわかる。サハラ砂漠を走るのであろう。・・・
・・・
目を凝らして読んでいって驚いた。このマラソンは、北アフリカのアルジェリア領で行われるが、そこは難民キャンプらしいのだ。・・・
巻末の解説にはこんな風に書かれてました。
P266
・・・九割以上が世間からしたら「はぁ?」である。
「私には『間違う力』があると言われる」
本人が本書の冒頭で語る通り、彼の知りたいこと、やりたいことはいつもどこか間違っている。そして、間違った立脚点からブレないのでさらに深みにはまっていく。
・・・
自分にも若干その気があるが、旅人にはこういうタイプの人が多い。面白そうな方にどんどん行ってしまって、道に迷いそうと思っていても止まれない。そして案の定迷子になっても、頭の片隅で面白がっている自分がいる。そこが旅の醍醐味でがあるが、
「もしかして危ないんじゃ?」
「これは金と時間の無駄なんじゃ?」
「何かあったら、ネットで叩かれるんじゃ?」
私を含め、凡百の旅人は脳内に鎮座する冷静な大人に説得されて引き返してしまう。
この脳内大人が存在しない、もしくはやりたいことに集中しすぎて気がついてないのが高野秀行なのだ。