右脳と左脳

快の錬金術―報酬系から見た心 (脳と心のライブラリー)

偽りの記憶が作られるに至る脳の動きに関するところです。
なんでそういうことになっちゃったかなー…と誰かと自分の記憶との違いにびっくりすることがありますが、この人の(自分の)左脳はそういうことにしたのだな…と眺めると、ちょっと冷静になれます。

P138
 さて興味深いのは、分離脳状態にある右脳、左脳は独自の仕方で外界と情報をやり取りし、意思伝達をすることができるということだ。たとえば分離脳状態の患者の右脳に「立って歩きまわるように」と指示し、今度は左脳に「何をしているのか?」と尋ねる。すると患者は、「飲み物を取りに行くところだ」、などと即答するのである。
 ・・・
 さてこの男性ははたして嘘をついているのだろうか?この問いに答えるために、私たちの脳が常に行っている可能性のある働きについて考えよう。私たちの脳が正常に機能している場合、日常生活において二つのことが常に起きている可能性がある。一つはある種の自動的で無反省的な思考や言動であり、これは右脳が主として司っている。そこで快原則に従った、つまりある種の快適さを生んだり苦痛を回避したりするものが選択されるのだ。そしてもうひとつはそれを理由づける理性的な思考や言動であり、これには左脳の働きが深く関与している。
 ・・・
 先ほどの問いに戻ろう。歩きまわった男性は嘘をついていたのか?おそらくそうは言えないだろう。嘘というにはあまりに自然にかつ迅速に自分の行動の理由を作り上げ、悪びれる様子を示さない。それは左脳の役割であり、常に行っている仕事なのだ。彼は嘘をついているという自覚はない。あえて言えば「脳が嘘をついている」のだ。・・・
 ・・・
 私が別書『脳科学と心の臨床』で論じたように、右脳は快原則に従った行動へと向かう傾向にある。右脳は「気まぐれなイノベータ―(変革者)」である。その時その時に欲した方向に行くように自ら自身を仕向けるのだ。それとは異なり左脳は「論理的に疑い、理由付けをする」脳である。両者の方向性は逆なのだ。そしておそらく両方の傾向は常に綱引きをしている。ちょうどステレオサウンドを聞くように、脳は両方の傾向を聞き、統合しているのである。・・・
 このように考えると、嘘や自己欺瞞はまさに左脳により生み出されるということになる。問題は、脳全体、つまり右脳、左脳の連合体が、左脳のでっちあげを知っているか、ということなのだ。

P145
 ・・・人は嘘をつくとき、それを嘘と知っている場合にはそれが態度に出てしまう。だからその嘘の内容を信じ込むことが適応的というわけだ。普通の人が無理をして真実と異なることを主張したとしよう。それが虚偽であることは誰の目にも明らかである。しかしその適応的な人にとってはいつの間にか、それが真実と感じられてしまう。・・・ここで本書の中心テーマである報酬系にとっても重要な点を指摘する。それは自己欺瞞は意図的に嘘をつくことによる多大な労作を軽減してくれるということだ。その労作には罪悪感に関連した心的ストレスや、嘘をつき続けるために必要な認知プロセスも含まれるだろう。簡単に言えば人は自己欺瞞により心の省エネをするのだ。その意味で自己欺瞞は快感に通じている。そしておそらく虚偽を真実にすり替えることは、脳科学的にはさほど難しいことではないのだろう。だからいわゆる偽りの記憶、という現象も存在する。


 ところで今日から一週間、ゲートウェイヴォエッジhttp://www.aqu-aca.com/seminar/gatewey/のお手伝いに行くので、ブログお休みします。今回はどんなエネルギーのグループでしょう?
 ではでは、いつも見てくださってありがとうございます(*^_^*)