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もっと あの世に聞いた、この世の仕組み

 人は一部だけを見て意味づけしがち、という話です。

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 人はみな、本来一つである存在を、無理やり無数のものに分けてとらえようとしてるってことなんだ。
 ・・・
 それは「物」に限った話ではない。「時間」もまた、その一部だけを切り取ってそこに意味をつけようとしてしまうんだ。
 いいかい、たとえばだよ、ある男性(Aさん)が交通事故にあったとしよう。
 ある日、Aさんは歩行者として青信号を渡っていた。そこに飲酒運転をした車が信号無視をして突っ込んてきたんだ。・・・すぐさま救急車で運ばれた。さて、Aさんにとってこの事故は「幸運」だろうか、「不運」だろうか。
「そりゃ言わずもがな、不運でしょう」
 なぜ?
「な、なぜって……。だっていまの話だと、Aさんには何の落ち度もないじゃないですか。・・・」
 ・・・
 では話を続けよう。
 実はAさん、この事故にあう前から、長きにわたりある願い事をしていたんだ。
「何です?ある願い事って」
 Aさんはね、「素敵なパートナーとの運命的な出会い」を望んでいたんだ。
 そして、ついに運命の人と思える女性に出会ったんだよ、搬送先の病院で!
 ・・・で、Aさんの退院後、二人は電撃結婚をするんだな。
 さて、Aさんにとって、この事故は「幸運」だろうか、「不運」だろうか。
「……そ、そうきますか」
 答えになってないぞ。もう一度聞こう、Aさんにとって、この事故は「幸運」だろうか、「不運」だろうか。
「幸運、ですね……」
 なぜ?
「えー、またー?いや、なぜって、そりゃあ、だって、ねぇ。・・・この事故はまさにその運命的な出会いをつくるきっかけとなったことになりますよね」
 だから「幸運」だと?
「……僕、やっぱり変なこと言ってます?」
 さらに話を続けよう。
 そうして新婚生活を迎えたAさんだったが、ある日のこと、その奥さんが多額の借金を隠していたことが発覚。そして、事あるごとに二人の趣味がかみ合わないことがわかってきた。
 ・・・
 さて、Aさんにとってこの事故は……。
「やっぱり不運、いや……わからなくなってきた」
 何言ってるんだよ。私は最初から話の種明かしをしてたじゃないか。
「最初から?」
 言っただろ、事物そのものには、意味も価値も存在しないと。それをとらえるその人によって、意味や価値が与えられていると。
「いや、だけどさぁ……」
 こうも言ったよ。「大きな流れやつながりを見ることなく、全体の中のある限られた一部だけをとらえて、そこに無理やり意味をつけるから、本質を見落としてしまう」と。
 「な、なんだかなぁ……。話としてはすごく納得できたけど、別な意味で釈然としないなぁ」
 ・・・
 とにもかくにも。自分の人生経験や生活習慣の中で身につけた固定観念(あらゆる決めつけ)は、想像以上に自分自身の自由を奪う足枷となっています。
 もしいま、あなたの目の前に障害があるならば、それはあなたの固定観念を指摘してくれるシグナルなのかもしれません。