「猫背の目線」という本に、「病の神様」を書いた後こうなったという話が載っていました。
P88
二、三年前に『病の神様』という本を出した。この本はぼくの七十年間にわたる病気体験をまとめたもので、どの病気も完治した話ばかりである。ぼくは生まれた時から医者に「この子はうまく育つかどうかわかりませんよ」と言われた病弱な赤ん坊として生まれたらしい。そのせいかしょっちゅう病気になったりケガを繰り返してきた。だから書くには事欠かなかった。とにかくどんな小さな病気とはいえないような病気まで病気と決めつけて書いてきた。とにかく日替わり病気の持ち主でよくもまあ次々と襲ってくるものだわいと感心するほどである。
ところがこの『病の神様』を書いた後、どういうわけかこれという病気をしなくなってしまった。本を書いたお陰で病気が治ってしまったとなると、これは一体どういうことなんだろう。創作は一種の吐き出す行為である。絵を描き切ることで心の中に溜まっているモヤモヤした不透明なものが吐き出されて、そんな絵に関しては特に人を惹きつけるのである。・・・
この創造行為と同じように病気の体験をひとつ残らず書いたことで創造行為と同じような浄化作用が起こったのかも知れない。・・・
病気と創造を同じ次元で扱ったが、以前ぼくは何十年と書いていた夢日記を纏めて一冊の本として出版した。この本を出すまでは毎晩のように不思議な夢ばかりを見ていたのに夢日記を出してからというもの一切夢を見なくなってしまった。・・・
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ぼくがなぜ病気についての本を書く気になったかはよく覚えていないが一種の病気自慢だったのかも知れない。病気自慢はさっきもいったように陰を陽に変えてしまう力というか法則のようなものがある。それをぼくの体の中の声がなんとなくぼくに教えたのかも知れない。・・・