大事な話

ど・スピリチュアル日本旅

石垣島の「たいらファミリー」という民宿でのお話。大事なことだなと、色々と思いが巡りました。

P262
「おじいは、どうしてウミンチュになったんです?」
 私が聞くと、陽気なおじいの顔は一転、真剣な顔になった。
「おじいの壮絶な話、聞きたいか?貧しい農村に生まれたおじいはな、11歳のとき、漁港の町、糸満の網元に売られたんよ。おじいのお父さんが、前借金と引き換えにしてな」
「売られた!?実のお父さんに!?」
「おじいのお父さんが浮気して、新しい奥さんをもらったおかげで、おじいのことが邪魔になったんや」
 ・・・
 網元の親方の命令で、真冬の凍てつく海で「素潜りの追い込み漁」をさせられたおじいは、何度も死にかけたのだという。深く長く潜ることを要求され、命を落とした子どもが何人もいたというから、むごい話だ。
年季奉公というと聞こえはいいが、実際は人身売買だから、人間扱いされんかったよ。おじいは、ここで絶対死ぬまいと思って、歯を食いしばって生きたさ」
「よくぞご無事で……」と言う以外、私は言葉がなかった。
 ・・・
「苦労した人間はな、必ず、幸せになれるんよ。昔は親を恨んだけど、今は心からありがとうと言いたい。海で何度も死にかけたけど、漁師としての技術を叩き込まれたおかげで、家族をちゃんと養えて、今があるからね」
 ・・・
 幼い自分や弟を売りとばし、恨みに恨んだ父のことを、許せただけでなく、感謝までできるようになったというおじいの話が心に染みる。どんな生い立ちであれ、「自分のルーツを大事」にして「親との関係を改善する」のは、自分の幸せのためにも必要なことなんだと思わずにはいられなかった。
 自分の生い立ちから目を背けなかったおじいは、貧しい生まれで幸せをつかんだシンデレラもビックリの、"シンデレラおじい"だなぁと思う。そして、おじいが生き延びたおかげで、ふたりの間に4人の子どもが生まれ、それが19人の孫、25人の曾孫に繋がって、今や平良ファミリーは総勢44名の大家族なのだ。
 人がここまで変わることができるなんて!「過去の事実」を変えることはできないけれど、「過去の意味」を変えることはできるのだ。私は今まで「過去」と「他人」は変えられないと思ってきた。でも、生き方次第で「過去の意味」と「自分」は変えることができるのだということを、おじいに教えられた気分だった。
 おじい&おばあと「おやすみなさい」を言い合い、外のテラスで夜風に吹かれつつ、お父さんとまったり泡盛を呑む。
「お父さん、いい家族に囲まれて、ほーんと、いい人生だね〜」
 お父さんは美味そうに酒を呑みながら言う。
「毎日感謝やね〜。お父さんはさ、仕事が楽しくてたまらんもん。『これを始めたらお客さんが喜ぶかな』って考えると、どんどんアイディアが湧くやろ?お客に喜んでもらいたいと思って始めると、どんな仕事もなんとかなるんよな〜」
 やっぱりそこに行き着くよなぁ。人が心の底から幸せを感じられるのは、人から喜ばれたときなのだ。「喜ばれると、うれしい」という感情は、人間の本能だとつくづく思う。
 ・・・
 お父さんと話していると、私も行け行けドンドンで前に進むぞ!と勇気が湧いてくる。
 人は、やりたいことがあれば、全部やっていいんだなぁと思う。損得でも私利私欲でもなく、自分が本当にやりたいことで、それが人の喜びにも繋がることであれば、きっとお金はついてくるんだ。お父さんのように!