夢見て行い、考えて祈る

茶色のシマウマ、世界を変える―――日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった 小林りんの物語

大事なことだなと思いました。

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「夢見て行い、考えて祈る」は、著名な臨床免疫学者で、大阪大学の名総長と言われた山村雄一が遺した言葉だ。
 仕事を始める動機は、夢がいいと彼は言う。
 夢は大志と言い換えてもいいかもしれない。
 若い頃は誰でも夢を抱く。けれど、その夢がたいてい実現しないのは、どうすれば実現できるだろうと考えてしまうからだ。
 夢を抱いたら、まず思い切って果敢に行動する。
「夢見て行い」とは、そういう意味だ。
 夢を実現するためにはまず行動して、それから初めて考える。
 自分のやり方は間違っていないか、他にもっといい方法はないか、本当にこの夢を追いかけていいのか……。考えることはいくらでもある。よくよく考えて、必要であれば行動を修正して、やれるだけのことをやったら、あとはただ祈るのみ。
 人事を尽くし、天命を待てということだろう。
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 りんは山村を知らなかったけれど、彼女の歩いた道筋はまさに「夢見て行い、考えて祈る」という、彼の言葉の通りの道だった。
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 りんが動き始めた時、それはまだ漠然とした夢でしかなかった。
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 彼女は頭はいいが、いわゆる考え深いタイプではない。考えることよりも、行動することのほうが好きだ。考えるのは、行動の結果としていろいろ不都合も生まれてきて、考えざるを得なくなるから考えるのだ。
 けれど、そういう彼女の性格が幸いした。
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 学校をつくるために駆け回りながら、その土台の上に、具体的な学校の姿を築き上げていった。彼女一人でそれをしたわけではない。みんなでやったのだ。
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「学校をつくる」という夢をかかげ、りんが走り始めてしまったからこそ、その後を追いかけるようにして、たくさんの人が動き始めたのだ。
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「たぶん無理なんじゃないか」
 ほとんどの人が内心そう思っていたけれど、それでもりんを助けたのは、彼女がどこまでもその夢の実現を信じていたからだ。
 自分は信じることができなくても、りんは信じていた。
 そういう彼女を信じることで、彼らもまた夢の実現を信じたのだ。