大事なことだなと思いました。
P232
「夢見て行い、考えて祈る」は、著名な臨床免疫学者で、大阪大学の名総長と言われた山村雄一が遺した言葉だ。
仕事を始める動機は、夢がいいと彼は言う。
夢は大志と言い換えてもいいかもしれない。
若い頃は誰でも夢を抱く。けれど、その夢がたいてい実現しないのは、どうすれば実現できるだろうと考えてしまうからだ。
夢を抱いたら、まず思い切って果敢に行動する。
「夢見て行い」とは、そういう意味だ。
夢を実現するためにはまず行動して、それから初めて考える。
自分のやり方は間違っていないか、他にもっといい方法はないか、本当にこの夢を追いかけていいのか……。考えることはいくらでもある。よくよく考えて、必要であれば行動を修正して、やれるだけのことをやったら、あとはただ祈るのみ。
人事を尽くし、天命を待てということだろう。
・・・
りんは山村を知らなかったけれど、彼女の歩いた道筋はまさに「夢見て行い、考えて祈る」という、彼の言葉の通りの道だった。
・・・
りんが動き始めた時、それはまだ漠然とした夢でしかなかった。
・・・
彼女は頭はいいが、いわゆる考え深いタイプではない。考えることよりも、行動することのほうが好きだ。考えるのは、行動の結果としていろいろ不都合も生まれてきて、考えざるを得なくなるから考えるのだ。
けれど、そういう彼女の性格が幸いした。
・・・
学校をつくるために駆け回りながら、その土台の上に、具体的な学校の姿を築き上げていった。彼女一人でそれをしたわけではない。みんなでやったのだ。
・・・
「学校をつくる」という夢をかかげ、りんが走り始めてしまったからこそ、その後を追いかけるようにして、たくさんの人が動き始めたのだ。
・・・
「たぶん無理なんじゃないか」
ほとんどの人が内心そう思っていたけれど、それでもりんを助けたのは、彼女がどこまでもその夢の実現を信じていたからだ。
自分は信じることができなくても、りんは信じていた。
そういう彼女を信じることで、彼らもまた夢の実現を信じたのだ。