もうひとつの話

茶色のシマウマ、世界を変える―――日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった 小林りんの物語

小林りんさんに、学校(ISAK)つくりの話を持ちかけた、投資顧問会社のCEOの谷家さんのお話です。

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「僕、どういうものが世の中で伸びるのかっていうことを考えるのが趣味なんです。それは仕事と関係する部分もあるにはあるけど、純粋に自分の楽しみでもある。儲かるかどうかは、二の次です。何が、この世の中で成長するか。それを考えるのが楽しい。それで投資をずっとやってきて気づいたのは、投資ってある意味単純で、本質的に大切なことは二つしかないということでした。ひとつは、投資するのはマクロで伸びる分野じゃなきゃいけないということ。そしてもうひとつは、誰がそれをやるか。極論すると、そのふたつに尽きてしまうんです。それじゃ、これからの時代に誰が成功するんだって考えた時に、今の世界状況で間違いなく最も有望なのは、アジアのハングリーで優秀な人材だと僕は思う。
 その実例を、今までにたくさん見てきました。たとえば、ISAKのアドバイザーにもなって頂いたマッキンゼーのエアン・ショーさんは、カンボジア難民の出身です。・・・それから僕が投資しているアメリカのベンチャーのCEOは、ベトナム人です。彼はいわゆるボートピープルとしてアメリカに渡り、教育を受け、弁護士になって、ベンチャー企業を立ち上げた。・・・そういう例は枚挙にいとまがない。共通しているのは、彼らはたくましさがぜんぜん違うってことなんです」
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「・・・英語ができなければグローバルに活躍できない、チャンスも与えられない。自分の子どもの時代にはそうなるだろうという思いを、はっきりとした危機感として持っていて、それで自分の子どもはインターナショナルスクールに入れました。
 だけど、それで気づいたことがひとつある。自分が知っているハングリーで優秀なアジア人は、そこにはほとんどいなかったんです。インターナショナルスクールに子どもを通わせている親たちは、基本的に富裕層で、子どもたちはみんな何不自由なく暮らしているわけです。それ自体は別に悪いことじゃないです。
 でも、自分自身への反省として言うんだけれど、彼らはなんでも持っているようで、実は成功のために最も大切なものをほとんど持ち合わせていない。何を持っていないかというと、それがハングリー精神でもありモチベーションなわけですよね。・・・
 インターナショナルスクールには、いいところもたくさんあるけれど、それが欠けているんです。別の言葉で言えば、多様性が決定的に不足している。・・・民族が違っても、生活水準が同じなら、人間の中身もだいたい同じなんです。こういう学校じゃなくて、もっとマインドの強い、ハングリー精神を持った友人たちと一緒に、自分の子どもを学ばせたかったなと思ったのが、そもそものきっかけです。そういう学校はないかと探しても、日本には一校もなかった」
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「りんちゃんがやろうとしたこと、膨大な数のストリート・チルドレンや巨大なスラム街の問題を解決する糸口になるかもしれない。・・・もちろんそうは言っても、奨学金を渡せるのは、最初はごく僅かな人数でしかないかもしれない。それでも少なくとも彼らの希望にはなる。さらにこれがうまくいけば、同じような試みをする学校が増えるかもしれない。
 それは彼らを助けるというよりも、むしろ僕たちのためです。そういう意味では、大袈裟ではなく世界のためなんです。なぜなら彼らこそが宝物だから。彼らの強い意欲、彼らの能力を、ストリートやスラムに埋もれさせてしまうことは、世界の損失と言ってもいい。彼らに日本に来てもらうこと、彼らに日本の子どもたちと一緒に学んでもらうことは、何よりもまず日本という国にとって無茶苦茶価値のあることなんです。・・・」