マイナスに見える力

過剰な二人

林真理子さんと見城徹さんの対談本を読みました。
ふむふむと思ったり、そうかな〜?と思ったり、色々しながらもお二人の過剰さが興味深かったです。
そんな中で、印象に残ったところ…自己嫌悪と無知について。どちらも見城さんのお話です。

P89
 編集の仕事をしていると、作家やミュージシャンなど自己顕示欲の強い人間に会うことが多い。その時僕は、自己顕示より、むしろ自己嫌悪に目を向ける。それをどれだけ持っているかで、いいものを生みだせるかを見極められる。自己顕示しかない人間は、薄っぺらな野心家にすぎない場合がほとんどだ。
 編集者は、作家の創るものが読者やオーディエンスにどう映るかを絶えず意識する。自己嫌悪のない作家にベストセラーなど書けるわけがない。
 いい仕事の条件は、自己顕示と自己嫌悪の間を、絶えずスイングすることなのだ。このことは作家と編集者だけに言えるのではない。ビジネスマンにも当てはまる。自己顕示と自己嫌悪を行き来するからこそ、次第に成長し、結果を出すことができるのだ。それが、その人の人間的魅力として結実する。

P192
「無名」「貧しい」「若い」、この3つがあれば、起業の条件はそろっている。・・・
 そしてあと一つ、「無知であること」も重要である。
 ・・・この業界をよく理解し、計算を先立てていれば、起業などしなかっただろう。大学を卒業以来、僕は出版社に身を置きながら、編集しかしてこなかった。営業や印刷、資材、広告、経理などは、全く知らない。
 今考えれば、僕のやったことは、暗闇の中で100メートル先にある針の穴に糸を通すようなことである。これは自慢ではなく、素直に思うことだ。もう一度同じことをやれと言われても、絶対に無理である。それぐらい圧倒的努力をした。
「無知であること」は大事だ。それは業界の常識にとらわれないことである。だからこそ、不可能を可能にするのだ。
 何か新しいことを始めようとする時、研究するばかりが能ではない。無知は、それ自体素晴らしい力になるのだ。