氣が引いている状態

心と身体のパフォーマンスを最大化する 「氣」の力 - メジャーリーグが取り入れた日本発・セルフマネジメントの極意 - (ワニブックスPLUS新書)

氣を配る、氣が引けるなど、氣の状態を表す言葉ってたくさんありますが、まさにその通りの結果になりますね。
自分のいる場に氣を通わせるって、改めて大事なことだなと思いました。
それから最後の方に書いてある、氣づく能力は才能と捉えられがちですが…というところも、なるほどでした。

P71
 ある時期、わたしが育成していた内弟子のひとりは、周囲のことにまったく氣づかないタイプでした。世間的には「鈍い」といわれる、そんな青年です。彼は自分に自信がなく、始終、周囲の目を氣にしているのですが、それでもまわりで起きていることに氣づけないのです。それは、彼がいつも「氣を引いている」からでした。氣を出すと氣は通い、氣を引くと氣は停滞します。そのことを何度も教えるのですが、何のことやらさっぱりわからない様子でした。
 育成に八方塞がりとなったわたしは、この青年を叱るのを止め、こういいました。
「物事が上手くいかないとき、どのような状態になっているか。毎回その実感をわたしに報告しなさい」
 初めのうちは「よくわかりません」の一点張りでしたが、何度も繰り返すうちに変化が出てきました。
「自分のことばかり氣にしていると、上手くいきません」
「ひとつのことにとらわれて、全体が見えていないと、上手くいかないようです」
 こんな調子で、少しずつ自分の実感を表現できるようになっていったのです。これは極めて重要なことで、実感がなければ良くなるはずがありません。また自分の実感を口に出して表現することは、氣を出すことでもあります。
 これは、物事が上手くいかないとき、いったん状況をリセットして、「氣が通う」状態に戻るための訓練でした。その結果、彼は、周囲で起きていることに氣づけるようになっていったのです。現在、この青年はリーダーのひとりとして、多くの人に心身統一合氣道を指導する立場に就いています。
 氣づく能力は「才能」と捉えられがちですが、それだけではありません。氣づけないのは、氣が滞っていることから生じていることが多いのです。これは訓練によって鍛えることができます。