とにかくびっくり

ヨシダ,裸でアフリカをゆく
「ヨシダ、裸でアフリカをゆく」という本を読みました。小さい頃マサイ族になりたい!と思ったというヨシダナギさんがアフリカを訪れたエッセイなのですが…いやーびっくりしました。
 私はこの世界のことを、全然まだ知らないんだなと、あまりにも未知の領域が広がっていることにびっくり。夢中で読んでしまいました。

P198
 幼少期、テレビでマサイ族を見てからずっと私が抱き続けてきた夢。
 それは、彼ら少数民族と同じ格好をして、同じ時間を共有することだった。
 初めてアフリカ大陸に足を踏み入れた2009年。裸族や少数民族と呼ばれる人たちと何度も接触はしてきたのだが、現代文明から離れて暮らしていればいる人たちほど、身にまとっている服が少なければ少ない人たちほど、誇りが高く、心の距離を縮めるのが難しいという結論にいたった。
 ・・・
 私は人見知りで、コミュニケーション能力はきわめて低いけれど、幼少期からアフリカの少数民族と仲よくなるには"同じ恰好をすれば必ず仲よくなれる"という根拠のない自信があった。
 ただ、今までの私には「同じ格好をしたい」とガイドに伝える勇気と語学力が欠けていて、それをかなえられずにいた。
 ―だが、時は来た。
 私の長年の夢がついにカメルーンの山奥でかなった。
 その夢をかなえてくれたのは、カメルーンの山岳地帯に暮らすコマ族だった。彼らは、お尻の割れ目と前だけを葉っぱで覆う"リアル葉っぱ隊"のような姿で暮らしている。
 ・・・
 私はまず、英語ガイドのウェインフェンに「服を脱いで、コマ族と同じ格好がしたい」と伝えた。彼は目ん玉をひんむいて「Are you serious?(お前正気か)」と、声をあげた。「もちろん本気ですとも。はやくもうひとりの通訳(フランス語⇔コマ族の言語)にも伝えて」と、私はウェインフェンにお願いをした。
 すると、案の定、ウェインフェンから私の伝言を聞いたもうひとりの通訳も「Are you serious!?」と、ぶったまげながら私の顔を見た。彼は「脱ぐと伝えて、おまえが怖気づいてみろ?逆に失礼にあたるぞ。やめとけ」と止めに入る。
 私がウェインフェンと通訳に「私は小さいときからアフリカの少数民族が大好きで、彼らと同じ姿になって仲よくなるのが夢だったんだ。その夢をかなえるために手を貸してほしい」と、真剣に伝えると、渋々ではあったが「長老に聞いてみる」と、通訳が動いてくれた。
 通訳から私の話を聞いていた長老は次第に笑顔になり、手招きをしながら「われわれの文化を、君のような白人の女の子が尊重してくれることを嬉しく思う」と言ってくれた。そして、長老は自分の奥さん4人を集めて、私の着替えを手伝うよう頼んでくれた。
 ・・・
 ・・・私が一瞬でパンツを脱ぎ捨てると、さっきまでは無表情で葉っぱをつけてくれていた奥様たちが、笑顔で「マヤマヤマヤー♪」と歌って踊り始めた。
 奥様たちの歓迎の舞にまぎれながら私が葉っぱ姿で登場すると、ウェインフェンと通訳は「OH MY GOD!」と口をアングリ開けて驚いていた。が、コマ族たちは大喜びである。そして私はすぐに長老から「近う寄れ」と呼ばれ、長老のもとへ行くと「わしは非常に君のことが気にいった!潔い女は気持ちがいい!わしの五番目の妻として君を迎えたい」と、まさかのプロポーズ。
 この日、幼少期から抱いていた私の"同じ姿になったら仲よくなれる"という根拠のない自信は、長い年月を経て"確信"へと変わり、遠く離れたカメルーンの長老の心に、私の思いは届いた。